今回は強烈なトレンド転換サイン「首吊り線」を解説していきます。
ただ、首吊り線に関してインターネット上に出ている情報には誤情報が多い印象です。
テクニカルアナリストでもあるクロサキとしては、日本テクニカルアナリスト協会の教えに則った、首吊り線の情報をお伝えしていきます。
株のトレードで利益をあげる場合、最も大切なことは“トレンドを読む力”です。
「首吊り線」はチャート(罫線)のトレンド転換シグナルといわれます。
あなたが順張り派、逆張り派、スイングトレーダーの場合、首吊り線の知識はとくに役立つことでしょう。
首吊り線の見方、使い方をお伝えしていきます。
この記事はこんな人におすすめ
★ローソク足の初心者
★トレンド転換を見極められるようになりたい方
★順張り投資家
★逆張り投資家
★スイングトレードに興味のある人
目次
首吊り線とは
(最終更新日:2022/5/24、元記事:2021/6/16)
首吊り線とは極端に下ヒゲが長く、実体と上ヒゲが短い線(ローソク足)をいいます。
ローソク足の基本パターンのなかでは「単線」に分類され、下影線の一種です。
用語解説
◎単線とはローソク足1本で情報を読み解くパターンのこと
◎影とは「ヒゲ」のこと
◎下影線とは、下影(下ヒゲ)の長さが実体(ローソクの胴体)の長さと同程度以上あり、上影(上ヒゲ)がごく短いローソク足のこと
首吊り線の4つの特徴
首吊り線の特徴を4つ紹介していきます。
首吊り線の特徴をつかむことで、チャートを見る時に首吊り線を探しやすくなりますよ。
首吊り線の4つの特徴
★中長期の上昇トレンドの天井圏で出現しやすい
★中長期の下降トレンドの安値圏(底値圏)で出現しやすい
★寄り付きで窓開けする場合が比較的多い
★カラカサの形になりやすい
首吊り線は上昇トレンドの高値圏(天井圏)で出現しやすい
首吊り線の特徴の1つは、中長期上昇トレンドの天井圏(高値圏)に出現しやすいこと。
実際の首吊り線のチャートを見てみましょう。
<首吊り線のチャート:モノタロウ>
※参照:スマートチャートプラス
モノタロウの株価は約1か月、上昇トレンドを続けていました。
しかし、首吊り線が高値圏で現れてからはトレンド転換。
下落トレンドとなりました。
上昇トレンドの最中に長い下ヒゲが出るということは、押し目買いの勢いが弱いことを意味します。
つまり、上昇トレンドの終わりが近づいていることのサインと読み取ります。
モノタロウに限らず、上昇トレンドの高値圏で首吊り線が出ると、株価が下落にトレンド転換するパターンが多いのが特徴です。
首吊り線は下降トレンドの安値圏(底値圏)で出現しやすい
首吊り線の特徴として、中長期下降トレンドの安値圏(底値圏)に出現しやすいことが挙げられます。
実際の首吊り線のチャートを見てみましょう。
<首吊り線のチャート:ホンダ>
※参照:スマートチャートプラス
ホンダの株価は1か月以上、下降トレンドを続けていました。
しかし、首吊り線が安値圏で現れてからはトレンド転換。
上昇トレンドとなりました。
下降トレンドの最中に長い下ヒゲが出るということは、一度大きく下がったけど下げ止まった(売りの勢いが弱まった)ことを意味します。
ホンダ同様、安値圏での首吊り線の出現は株価反発、トレンド転換のシグナルとなります。
首吊り線は寄り付きで窓開けする場合が多い
首吊り線は高値圏・安値圏のどちらに現れるときも寄り付きでストップ高(安)を含む窓開けとなるケースが多くあります。
これはセリングクライマックスのように、トレンドの最後はローソクの最後のごとく瞬間的に勢いが強くなる傾向があるためです。
※参照:スマートチャートプラス
窓を開けて首吊り線が出た場合、トレンド転換のシグナルであることを意識する必要があります。
首吊り線はカラカサの形になりやすい
首吊り線とは極端に下ヒゲが長く、実体と上ヒゲが短い線(ローソク足)と紹介しました。
しかし、現実にはローソク足の形状が「カラカサ」になるケースが多くあります。
カラカサは、実体が短く上ヒゲがまったくないローソク足です。
チャートを見て首吊り線を探すときには、カラカサにも注目するようにしましょう。
首吊り線の特徴まとめ
◎上昇トレンドの天井(高値圏)に出現
◎下降トレンドの底値(安値圏)に出現
◎短い実態と長い下ヒゲのローソク足
◎寄り付き、窓開けになりやすい
◎カラカサになりやすい
首吊り線は「高値圏のみに出現」は誤解
この章では首吊り線の2つの誤解について解説していきます。
2つの誤解とは…
★「首吊り線」と「たくり線」の誤解
★首吊り線が「高値圏のみに出現」するという誤解
です。
それでは早速本題に入っていきましょう。
「首吊り線」の逆のローソク足は「たくり線」とよく言われます。
実際にネット検索をすると「たくり線」の定義が首吊り線の逆である説明がなされている記事を多く見ます。
この点について、日本テクニカルアナリスト協会が発行するアナリスト試験のテキストに則って解説をしていきます。
日本テクニカルアナリスト協会が発行する教科書では「首吊り線」と「たくり線」は同義となっています。
しかし、インターネット上の情報を見ると
“★「首吊り線」は天井圏で現れる線”
“★「たくり線」は底値圏(安値圏)で現れる線”
と誤解を生む解説がされている記事が多く見受けられますので注意が必要です。
首吊り線とは、あくまで極端に下ヒゲが長く、実体と上ヒゲが短い線のことであり、天井や底値圏以外にも出現します。
ここで少し日本テクニカルアナリスト協会のことも紹介しておきます。
日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)とは
★国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)に加盟するNPO法人
★テクニカル分析理論の教育普及活動、テクニカル分析理論の向上を通して、投資活動・経済活動の発展に寄与することを活動目的としている
★テクニカルアナリスト資格試験を取り行っている
※日本テクニカルアナリスト協会公式サイト
NTAA日本テクニカルアナリスト協会
首吊り線が現れる状況とは
たくり線との誤解のところでも触れましたが、首吊り線が現れる状況は、上昇トレンドだけにあらず。
基本的には上昇トレンド・下落トレンド・横ばいトレンド・レンジ相場…
どんな状況でも出現します。
なぜなら首吊り線とは、あくまで極端に下ヒゲが長く、実体と上ヒゲが短い線のことだからです。
ただし、上昇トレンド・下降トレンドが続いた後に出る場合には、トレンド転換のシグナルになりやすいのはまちがいありません。
安値圏の首吊り線と高値圏の首吊り線
首吊り線が注目される理由は、天井圏あるいは安値圏で出現するとトレンド転換になりやすいからです。
では、本当に上昇トレンドの高値圏、下降トレンドの安値圏で首吊り線が出現するとトレンド転換するのでしょうか?
百聞は一見に如かず。
実際のチャートを実例として、高値圏と安値圏の首吊り線を見てみましょう。
首吊り線が出た後、はっきりとトレンド転換しているのがわかると思います。
高値圏の首吊り線は下落シグナル
<北の達人コーポレーション>
※参照:スマートチャートプラス
北の達人の例に出したのには理由があります。
それは、上昇トレンドの勢いが強いほど、天井圏で首吊り線が出ると株価が落ちていきやすくなるからです。
上のチャートはそれをよく表現した例だと思います。
安値圏の首吊り線は上昇シグナル
<バリューゴルフ>
※参照:スマートチャートプラス
首吊り線の稼げる使い方
首吊り線の特徴などをお話してきました。
では、実際に首吊り線を発見したらどのような使い方をすれば利益につながるのか?
「天井圏で出現パターン」
「安値圏で出現パターン」
双方の戦略をご紹介します。
首吊り線が天井圏に出現したパターンの戦略
◎株を保有している場合
【100株しか持っていない場合】
⇒含み益が十分に出ているようなら、利益確定がベターと思われます。
【200株以上を保有している場合】
⇒首吊り線が出た時点で少し利益確定。
⇒その後、下がりそうなら売却数をふやす。セオリーに反して上がりそうなら様子を見ながら保有継続。
◎株を保有していない場合
⇒首吊り線が出た後に、株価下落がはっきりすれば、トレンドがしばらく続く可能性が高いので空売りを検討。
首吊り線とインジケーターを組み合わせる
※参照:トレーディングビュー
高値圏で首吊り線が出た場合、トレンドフォロー系とオシレーター系のインジケーターを併用することをおススメします。
上のチャートでは、ボリンジャーバンドとストキャスティクスを使用しています。
★解説★
・首吊り線が出たところで、ボリンジャーバンドの「+2σ」にタッチしているため、下落のサインと読める。
・ストキャスティクスも「買われすぎ水準」の範囲で、デッドクロスしそうになっている。
これらのことから、北の達人コーポレーションの株価は下落に転じるとの予測が立てられる。
その結果、利益確定や空売りを投資の選択肢として考える。
※関連記事※
株の売り時と株式を売るタイミングを見つける方法
空売りの仕組み 実践的な空売りの使い方とは
空売りネットの見方と使い方 機関の空売り活用法
首吊り線が安値圏に出現したパターンの戦略
◎株を保有している場合
安値圏での首吊り線はセリング・クライマックスでもあります。
もし塩漬け状態になってしまっている保有株があるのなら、トレンド転換で株価はあがる可能性が高まります。
利益が出るまで待つのか?
収支トントンで売るか?
株価がどこまで戻しそうなのかを予想し、出口戦略を考える。
首吊り線からのチャートパターンの1つに三尊があります。三尊天井・逆三尊の時の出口戦略をそれぞれ解説しています。
↓↓↓
三尊天井の株でのエントリーポイント、だましの見極め方
逆三尊のエントリーポイント、利確をわかりやすく図解
※塩漬け株の対処方法については下記記事で詳しく解説しています。
↓↓↓
塩漬け株の対処法5選【アナリスト解説付き】
◎株を保有していない場合
⇒トレンド転換を確認後、まずは100株購入。その後も上昇が続くのであれば追加購入を検討。
首吊り線とボリンジャーバンド、ストキャスティクスを組み合わせる
※参照:トレーディングビュー
安値圏で首吊り線が出た場合も高値圏同様、トレンドフォロー系とオシレーター系のインジケーターを併用することをおススメします。
こちらでもボリンジャーバンドとストキャスティクスを使用しています。
★解説★
・首吊り線が出たところで、ボリンジャーバンドの「-2σ」にタッチしているため、上昇のサインと読める。
・ストキャスティクスはすでに「売られすぎ水準」から脱しており、その後、売られすぎ水準に戻る可能性があったが、ゴールデンクロスした。⇒上昇の勢いが強い。
これらのことから、バリューゴルフの株価は上昇に転じるとの予測が立てられる。
その結果、新規買いや空売りの買い戻しを投資の選択肢として考える。
首吊り線で稼ぐためにローソク足の基本をおぼえよう
首吊り線とはローソク足のパターンの一種です。
ですので、首吊り線の理解を深めるためには、ローソク足の基本をおさえましょう。
ローソク足の基本
★英語名:「キャンドル・スティック・チャート」
★誕生場所:日本
★考案者:不明
※本間宗久の考案者説が広く信じられていますが、裏付け資料は未発見。
★誕生した時代:明治期
※江戸時代と誤解されがちですが、明治期に考案され昭和期に普及した可能性が高い。
★特徴:4本値「始値」「高値」「安値」「終値」
★基本類型:「単線」「2本線」「3本以上の線」
ローソク足の読み方
ローソク足は以下の4本値を読み取るのが基本です。
【始値】取引が始まった時の株価
【終値】取引が終わった時の株価
【高値】取引期間中の最高値
【安値】取引期間中の最安値
【陽線】始値より株価が高い。買いが強い。
【陰線】始値より株価が安い。売りが強い。
さらに詳しいローソク足の見方についてはコチラの記事をどうぞ。
↓↓↓
ローソク足の見方 今さら聞けない基本をプロが解説!
首吊り線の大元「酒田五法」の基本を紹介
酒田五法とは、3本以上のローソク足でチャートパターンを分析する方法です。
その基本形は5つあり、「三山」「三川」「三空」「三兵」「三法」と呼ばれます。
★★三山(さんざん)★★
三山は「上げ」「下げ」を3回くり返して3つの天井(山)をつくり、相場の大天井となります。いわゆる「トリプルトップ」のこと。
⇒株価下落のシグナル
真ん中の山がいちばん高い三山を「三尊天井」と呼び、英語では「ヘッド&ショルダー」と呼ばれます。
★★三川(さんせん)★★
三川は三本のローソク足からトレンド転換を捉えるチャートパターン。
「宵の明星」「明けの明星」が有名。
★★三空(さんくう)★★
三空とは3回連続でマド(空)を開けて相場が形成されるパターンです。
「三空踏み上げには売り向かえ」という相場格言が有名。
三空踏み上げの意味は、3回窓を開けて株価が上昇すると、窓埋めの動きが加速して売られることが多いので、売りで対処しろということです。
★★三兵(さんぺい)★★
三兵は陽線、または陰線が3本連続で上昇したパターンです。
・同程度の長さの陽線が下値と上値を切り上げながら3本連続で出るものを「赤三兵」と呼びます。
⇒強い上昇トレンドのシグナルとされます。
・同程度の長さの陰線が下値と上値を切り下げながら3本連続で出るものを「三羽烏」と呼びます。
強い下落トレンドのシグナルとされます。
※昔は陽線を赤色の墨で書いていたことから、赤三兵と呼ばれる。
★★三法(さんぽう)★★
三法は5本のローソク足で形成される相場の小休止を意味します。
・上げ三法:上昇トレンドの中で大陽線が出現したあと、はらむ形で陰線が3つ並び、再び大陽線が出現するパターン。
・下げ三法:下降トレンドの中で大陰線が出現したあと、はらむ形で陽線が3つ並び、再び大陰線が出現するパターン。
酒田五法は本間宗久が考案者ではない?
ローソク足と酒田五法は本間宗久が考案したものではない。
こんなことをいうと、経験値の多いトレーダーからは「何を言っているんだ」と言われそうです。
しかし、先述したように現状では広く信じられているローソク足と酒田五法は本間宗久が考案者説は誤解ということになります。
※本間宗久
ちなみに日本テクニカルアナリスト協会の調査では、本間宗久が酒田五法とは別の罫線(チャート)を使っていたことを裏付ける資料が見つかっています。
もちろん、本間宗久が酒田五法を考案したという裏付け資料や文献などが新たに見つかれば話は別です。
しかし、現時点では本間宗久が考案者であることを裏付ける証拠は見つかっていないのが実情です。
首吊り線の注意点
首吊り線とはトレンド転換のシグナルになることを解説してきました。
特に中長期の上昇トレンドが続いた後に首吊り線が出ると、高い確率で株価が下落していく傾向があります。
しかし、注意点がないわけではありません。
そこで、首吊り線の注意点についてもお話していきます。
★ストップ高の後の首吊り線は急落のリスク
★下ヒゲの長さが足りないとダマシの可能性
★出来高が伴っていない首吊り線は精度を欠く
★首吊り線の形だけにこだわらない
ストップ高の後の首吊り線は急落のリスク
三空踏み上げの解説でも触れましたが、ストップ高の後に首吊り線が出るとトレンド転換のシグナルになることが多いです。
特に何度もストップ高を続けて急上昇した銘柄の場合、その反動で株価は急落しやすくなります。
高値掴みとなって大損するリスクもありますのでストップ高の後の首吊り線には注意が必要です。
※参照:トレーディングビュー
下ヒゲの長さが足りないとダマシの可能性
いくら天井圏や底値圏で首吊り線のようなローソク足が出ていても、下ヒゲの長さが足りない線はダマシの可能性があります。
下ヒゲの長さが足りないということは、売り圧力がそれほど大きくないことを意味します。
上昇トレンドの最中にそのような首吊り線が出ても、トレンド転換をするには売りの圧力が弱い可能性が高いのです。
首吊り線には十分な長さの下ヒゲが必要だと思います。
出来高が伴っていない首吊り線は精度を欠く
さくらくんの質問への回答になります。
出来高が少ないのにローソク足が首吊り線になる可能性は十分にあります。
出来高が少ないことの注意点は、株価が操作されやすいことにあります。
少し資金量のある人がまとまった資金を入れて買いあげたり、空売りしたりして、たった1人の相場参加者の影響を大きく受けてしまうリスクがあります。
特に人気のない銘柄、浮動株の少ない銘柄は注意が必要です。
首吊り線の形だけにこだわらない
首吊り線の戦略でもお話しましたが、首吊り線だけではなく、ボリンジャーバンドやストキャスティクスなどのテクニカルインジケーターを組み合わせて分析した方が良いということです。
ローソク足の情報だけでは、情報の精度がよわい場合があります。
トレンドフォロー系とオシレーター系、両方のテクニカルインジケーターを組み合わせることで首吊り線の情報の確度もアップすることでしょう。
首吊り線の形にばかりこだわってしまうと、こうした重要な情報がおろそかになってしまうので注意が必要です。
首吊り線のまとめ
今回は首吊り線についてお話してきました。
さくらくんのひと言から始まった「首吊り線」の解説でしたが、みなさんにもわかりやすく伝わっていることを願います。
最後に今回のおさらいをしておきましょう。
★首吊り線は上昇トレンド以外にも出る
★安値圏の首吊り線は上昇トレンド転換シグナル
★高値圏の首吊り線は下降トレンド転換シグナル
★ストップ高の後の首吊り線は注意
★首吊り線はテクニカル指標との組み合わせが大事
★2単元以上保有している場合は、少しずつ利確
★首吊り線の下ヒゲの長さに注目する
★ネット上の情報には誤解が多い
★★最後に★★
今回は首吊り線を取り上げましたが、執筆中に思ったことがあります。
投資関係のネット上の情報には誤解や間違いが多いことです。
今回の記事は日本テクニカルアナリスト協会のテキストをベースに書きました。
日本テクニカルアナリスト協会は、テクニカル分析の普及・啓発活動を行うNPO法人で、テクニカルアナリストの資格制度を設けている団体でもあります。
テクニカル分析における情報の精度は日本で一番高いのではないかと思います。
今後もテクニカルアナリストの一人として、みなさんのお役に立つ正確な情報をお届けしていきたいと思います。