気配値(けはいね)、板情報、板読み。
気配値の見方や寄り付き前の見せ板にだまされないことは、トレードで資金を減らさずに増やしていくには必須の知識です。
しかし、株取引をはじめたもののイマイチ板の知識に自信が持てない初心者の方も多いようです。
今回はそんな方のお悩みを解消するため、気配値の見方や板情報の見方(板読み)についてわかりやすく解説していきます。
株取引でデイトレードやスキャルピングをするのにこの3つの知識は必須ですが、短期トレーダーだけでなく中長期投資の方にとっても大切な知識です。
しっかりと情報をお伝えしていきます。
目次
気配値と板読み(板情報)はなぜ大事なのか?
テクニックなどのお話をする前に、気配値と板読み(板情報)がなぜ大事なのかについて触れておきましょう。
板(板情報)がなぜ重要なのか?
その答えは、
板は投資家心理を映し出す鏡
だからです。
株式市場にはヘッジファンドのような機関投資家からベテランの個人投資家、今日株取引を始めましたという超初心者まで実にさまざまな人がいます。
自分以外の市場参加者の心理を読み解くことが、トレードで勝つための王道であることはいうまでもありません。
スイングトレーダーや中長期投資家であれば、それほど大きな影響は受けないかもしれません。
しかし、デイトレーダーとスキャルパー(スキャルピングする人)のように、超短期のトレーダーにとって気配値をはじめとした板読みは必須の知識。
はっきり言って、板読みができないと勝てないといっても過言ではないでしょう。
もちろん、スイングトレードや長期投資の人にとっても板情報に関する知識を持つことに損はありません。
板読みデイトレードで億超え「テスタ」氏も気配値や板を重要視
株取引(主にデイトレ・スキャルピング)で資産40億円以上をつくったテスタ氏も気配値や板情報、板読みを重視する1人です。
テスタ氏は自身のYouTube動画のなかで、板によって買い方を変えることを明かしています。

テスタ氏はスキャルピングするタイミングについて、
“チャートや板情報などを見た瞬間に買いか売りかを判断できないと厳しい”
とも語っています。
玉石混交の株式市場で勝ちトレーダーになるには、板情報に反映された投資家心理をいかに読み解くかがカギとなる金言だといえるでしょう。
※関連記事
テスタ氏のスキャルピング手法を銘柄選びから解説
板とは(気配値・板情報)
板とは現時点で出ている売買注文(成行・指値)を銘柄、株価ごとに表示したものをいいます。
「板」と「気配値」はほぼ同義です。
この板(気配値)が表示している情報を「板情報」といいます。
ちなみに板を英語では「order book」あるいは「board」と呼びます。
証券会社によって板情報を「板」と表記するところもあれば「気配値」と表記するところもあります。
例えばSBI証券では「気配値」、楽天証券では「板」と表記されます。
※出典:SBI証券
※出典:楽天証券
板情報の特徴としては、
・注文に変化があった時
・売買が成立して残り注文数が変わった時
この2つのタイミングでリアルタイムに情報が更新されていくことが挙げられます。
板読みとは「気配値+歩み値」から売買タイミングを図ること
板読みとは気配値や板情報から、その時の投資家心理を読み解いて売買タイミングをつかむことです。
とくに気配値と「歩み値」(あゆみね)の情報を駆使することで、売買のタイミングがつかみやすくなります。


デイトレーダーにとっては、気配値と歩み値はセットで覚えておくことが必須といえるでしょう。
板情報の気配値と歩み値を組み合わせることで何がわかるのかを以下にまとめました。
アップティックとは、売り板に買い注文をぶつけて売買を成立させること(株価上昇)
ダウンティックとは、買い板に売り注文をぶつけて売買を成立させること(株価下落)
実際に歩み値を見てみましょう。
<歩み値(アップティック)>
※出典:SBI証券
<歩み値(ダウンティック)>
この歩み値を見ると、誰が売買しているのかが見えてきます。
バンク・オブ・イノベーション(4393)の場合
歩み値を見ると株価3070円から3115円まで一気に5500株ほどの買いが入っています。
これを現物買いするには約1700万円必要であり、信用買いだとしても約500万円必要になります。
これは資金が数百万円程度の個人投資家にはなかなかできることではありません。
となると、機関投資家か経験豊富な大口の個人トレーダーが入っているのかなと見当を付けることになります。
ステムリム(4599)の場合
歩み値を見ると株価733円から727円まで一気に14000株ほどの売りが入っています。
ステムリムは21年12月に1069円の高値を付けて以降、下降トレンドが続いている状態でした。
つまり、安値で買った人が一気に利益確定をしたとは考えにくく、空売りによる下げだと予測できます。
これだけの量の株を個人投資家が一気に空売りできるとは一般的に考えにくく、大口による空売りが入ったものと推測できます。
※もちろん、個人トレーダーでもできる人もいます。
個人投資家が主体になる場合、一回の約定の株数が3000~4000株になることはあまりないかなとクロサキの経験上思います。
こうしたことを踏まえると、大口が入っているのかなと予想をたて、その流れに乗ったトレードをすることが一つの戦略になります。
板情報の基本まとめ
気配値(板情報)の基本的な項目をご紹介していきます。
ここで解説するのは、以下の項目です。
・特別気配について
・「連買い」と「連売り」
・「over」と「under」
それぞれ掘り下げて解説していきましょう。
気配値は何時から?東証は8時です


東証・名証・札証・福証の気配値の開始時間を以下にまとめました。

気配値の特別気配とは(特買い・特売り)
強力な買い材料や売り材料が出たとき、気配値が特別気配になる場合があります。
特別気配には「特買い」と「特売り」というものがあります。
上方修正などの強力な買い材料が出た時には「特買い」
下方修正などの強力な売り材料が出た時には「特売り」
となるのが一般的です。
※出典:SBI証券

特別気配は一定の値幅を超える取引が成立しそうになったときに発動します。
一定の値幅のことを「気配の更新値幅」といい、直前の株価によって決められることになります。
上の表を参考にすると、
株価1500円の銘柄があった場合、更新値幅は40円なので、1459円以下か1541円以上になる取引が成立しそうな場合に特別気配となります。


気配値の「連買い」と「連売り」とは
個別銘柄が動意づくと、気配値の板情報に「連」という文字が表記されることがあります。
この「連」とは「連続約定気配」の略称で、連続的に売買が約定し直前の約定価格から更新値幅の2倍超えの水準で買い上がる(下がる)場合に表示されます。



・機関投資家などによる大口注文によって直前の約定値段から更新値幅の2倍超の水準となる場合
パターン2
・場中の決算発表などによって注文が殺到し連続的に売買が約定、1分以内に更新値幅の2倍超の水準となる場合
※出典:SBI証券
「連」が買い板に表示されると「連買い」、売り板に表示されると「連売り」と呼ばれます。
板情報の「over」と「under」とは
気配値の板情報を見ると、上部に「OVER」、下部に「UNDER」の表示があります。
OVERは「710円よりも高い値段で売りたい投資家の合計注文量」
UNDERは「700円未満で買いたい投資家の合計注文量」
を意味しています。
つまり、700円未満で買いたい投資家と710円以上で売りたい投資家の心理を読み解くことで、値動きが上に行きやすいのか下に行きやすいのかといった予測を立てるのに活用します。



気配値(板情報)の板読みのコツ
気配値はとても奥深く、マスターするのは大変です。
しかし、板読みへの理解を深めれば利益を積み重ねることもできるでしょう。
そこで、株取引の初心者でもはじめやすい板読みのコツをご紹介します。
板読みのコツは以下の2つです。
2つのコツ「しこりの増えた価格を意識する」「気配値の寄り付き前は見せ板に注意」について掘り下げて解説していきましょう。
しこりの増えた価格を意識する
板読みのコツの1つめは「しこりの増えた価格を意識する」です。


※出典:トレーディングビュー
協和キリンのチャートで解説すると、3/24に「買い」を入れた価格に「しこり」ができたと考えられます。




上の例はチャートを用いたものですが、板情報をつかったものも見ていきましょう。
これから3枚の板情報の画像をご紹介します。全て同じ銘柄のものだと思ってごらんください。
板情報①
上の板情報①では、3105円の売り板を食えず、3100円という節目の価格をなかなか上に抜けない状態にあります。
そして、下の板情報②では、大口の買いが入って3105円よりもさらに高い3110円まで株価が上昇しました。
板情報②
しかし、板情報③をごらんください。
機関投資家の空売りにより、株価は3050円まで売り崩されてしまいました。
板情報③
こうなると、3100円や3105円で買った人は、買い値と同値まで株価あがってくれ…という投資家心理になり、同値になった時点で撤退する人が増えます。
もしかしたら、さらに株価が上昇していく可能性もありますが、板トレードをする人の多くは短期トレーダーなので、損を最小限に抑えたい心理の方が強く働く可能性が高いからです。
この時、3100円や3105円に「しこり」があったことになります。
しこりの価格まで株価が戻ると、撤退したい人の売りが増加する可能性があります。
となると、3100円まで上がったら、また一時的に下がる可能性が高まるという見立てを行えます。
ということは、その価格近辺で空売りを入れるなどの選択肢を持つこともできます。
このように、「しこり」となった価格を意識することで、投資戦略とオプション、利益を上げる機会が増えるので、しこりとなった価格を意識することがとても重要です。
気配値の寄り付き前は見せ板に注意
気配値には注意点がいくつもあります。
その中でも代表的なのが「見せ板」です。
特に朝8時台の気配値の寄り付き前は見せ板に注意が必要です。


個人が見せ板行為をすると、証券取引法違反で逮捕されるおそれがありますのでお気をつけください。
しかしながら、現実として違反と認識しながら行う個人や機関投資家などによって、見せ板が行われていると考えられます。
特に値動きの軽い小型株などでは、注意が必要です。
数年前にシティ証券は「見せ板」で資格停止処分を金融庁から受けました。

まずはこちらの板情報をごらんください。
株価300円をはさんだ気配値です。


これだけ買い注文が入ると、見せ板だと気づかない人はスゴイ買い注文が入っていると錯誤しがちです。
その結果、買いが買いを呼び、株価が上がっていく可能性が高まります。



見せ板を出した結果、302円に置いていた売り注文が全部約定すると、298円の大量の買い注文が“消滅”することがあります。これが見せ板です。
大量の買い注文が一気に消えたことで、買い注文数が減少して株価が下落に転じやすくなります。
見せ板につられて株を買った人は損をするリスクが高まるわけです。
板読みのコツとしては、このように急激に買い注文が増えた時などに、見せ板を疑うことです。
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