貸株の7つのデメリットと4つのメリット

貸株 デメリット

貸株デメリットを知らずにやってしまうと思わぬ損失につながってしまう…

ご存じでしたか?

気軽に高金利を得られるということで貸株に注目する個人投資家は多いようです。

しかし、何事にもメリットとデメリットがあるもの。

貸株も同じです。

そこで、今回は貸株のデメリットとメリットを解説していきましょう。

貸株とは

(最終更新日:2022/7/27、元記事:2022/2/24)
貸株とは、保有株を証券会社に貸し出すことで「貸株金利」をもらえる制度です。

貸株はながらく機関投資家しか行えませんでしたが、マネックス証券が業界で初めて個人投資家向けにサービス提供を開始しました。

そのおかげで、私たち個人投資家も貸株金利を得られるようになりました。

貸株 デメリット マネックス

※引用:マネックス証券

貸株は長期保有目的や無配当の株を、貸株金利をもらうことで有効活用できます。

通常、長期保有の目的として配当金や株主優待が挙げられますが、利益を得るには売却する必要があります。

貸株は証券会社のサービス内容次第では、配当金相当額株主優待を確保した上で貸株金利を受け取れ、将来的には売却による利益も得られる可能性があります。

貸株 株主優待 配当

※引用:楽天証券

無配当の株であれば、売却以外の方法で利益を得られることはメリットと言えます。

貸株はただ保有しているだけの株を利用でき、「保有はしたいが利益も得たい」という投資家ニーズにも対応した便利なサービスといえるでしょう。

貸株の仕組み

貸株の仕組みとは、どのようになっているのでしょうか?

ここでは貸株の仕組みについて図説していきます。

貸株の仕組み

※引用:ダイヤモンドZaiオンライン

株式市場には普段私たちが取引をしている取引所のほかに「貸株市場」があります。

貸株市場はもともと機関投資家のみが参加できる市場でした。

保険会社や外資系証券、ヘッジファンド等の機関投資家が株券を貸借し、株券を貸した側が借りた側から金利を受け取る取引が行われています。

貸株サービスは、証券会社が窓口となり個人投資家から預かった株券を貸株市場に流通させることで、個人投資家が間接的に貸株市場に参加することを可能にしました。

貸出先から支払われた貸株金利は証券会社が受け取り、個人投資家に支払われます。

現在この仕組みを活かしたサービスは、マネックス証券に限らず大手証券会社を中心に提供されるようになりました。

貸株金利とは

貸株金利とは株を貸す側が借りる側から受け取れる貸出金利で、株式のレンタル手数料にあたります。

貸借利率は銘柄ごとに異なり、利率は市場動向をもとに各証券会社が決定します。

利率を決定する主な要素は流動性と需要です。

調達しやすいか、ニーズが高いかは銘柄ごとに異なり、また状況によって変化するため、各証券会社は週ごとまたは月ごとに貸借利率を見直します。

貸株金利は日割りで算出されるため、貸株期間が1日のみでも支払われます。長期に限らず、短期で貸し出したい人でも貸株運用は可能です。

貸株金利の計算式

1日あたりの受取金額の計算式は以下の通りです。

貸出した株数 × 終値 × 貸株金利(%) ÷ 365日 = 1日分の受取金額

具体的な数字を例に計算してみましょう。

【例】
株価(終値):1,000円
貸出す株数:500株
貸株金利:1.0%

500株(貸出した株数)×1,000円(終値)×1.0%(貸株金利)÷365日=約14円

1日あたり約14円(14円×1日)
1ヶ月あたり約411円(14円×30日)
1年あたり約5,000円(14円×365日)

貸株金利1%だとそれほどうま味はないかもしれませんが、10%の高金利銘柄だと単純にこの事例の10倍。

無配当・優待なし銘柄であれば、貴重なインカムゲイン獲得の手段になるでしょう。

銘柄によって貸株金利が高い理由

貸株金利は銘柄によって異なりますが、中には10%以上になる銘柄も存在します。

なぜ銘柄によって貸株金利が高騰するのでしょうか?

貸株金利を上げる要素は「流動性」と「需要」です。

つまり、貸株市場で流動性が高く調達しやすい銘柄は金利が低く、流動性が低く調達しにくい銘柄ほど金利が高くなります。

それゆえ、需要が高い銘柄ほど金利が高いとも言えるでしょう。

流動性と需要は銘柄ごとに異なり、状況によって変化します。

そのため証券会社は銘柄ごとにレートを設け定期的に見直すことで、市場レートに近い金利を貸主に提供するのです。

貸株金利は年率0.1%〜1%の銘柄がほとんどですが、中には年率10%〜18%のものもあります。

また、一般的に値動きの激しい新興市場銘柄の方が金利は高めです。

<楽天証券の貸株金利>

貸株金利

※引用:楽天証券

貸株の7つのデメリット

貸株にはデメリットが7つあります。

貸株サービスを利用して貸株金利を得ようとする場合には、以下の7つのデメリットを把握しておくことが重要です。

貸株 デメリット

それぞれの貸株のデメリットを深堀していきましょう。

貸株のデメリット①貸株金利が低い銘柄もある

貸株対象銘柄の金利は0.1%以上1%未満がほとんどで、高リターンの銘柄はごく一部に限られます。

楽天証券で取り扱われる貸株対象銘柄は約4,200銘柄ありますが、金利1%を超える銘柄は約470銘柄です(2022年2月時点)。

つまり、全対象銘柄のうち金利1%未満の銘柄が約9割を占めます。

金利10%以上の銘柄もいくつかあり「ボーナス銘柄」として紹介されています。

貸株による収益は金利によるものですが、低金利銘柄の場合は思ったほどのリターンは望めないでしょう。

貸株のデメリット②返済された時の株価下落リスク

貸し出した株は「空売り」に利用されるため、返済された時には株価が下がり含み損になっている可能性があります。

空売りは、株を高値で売却し安く買い戻す「売り」からエントリーする投資手法です。

「売り」から始める空売りをするには、証券会社から株を借りる必要があります。

その時に貸し出されるのが貸株です。

下落した分が利益となる空売りに利用されるということは、売り圧力がかかっていることを意味します。

特に貸株金利が高い銘柄は空売りのニーズが高いので、値動きは注視した方が良いでしょう。

貸株のデメリット③税金は雑所得扱いで確定申告が面倒くさい

貸株によって得られる「貸株金利」は税務上では雑所得として扱われ、確定申告が必要となります。

運用によって得られる利益として挙げられるのが配当金です。

配当金は原則として源泉徴収されるため確定申告は不要です。

しかし、貸株金利は雑所得に分類され、確定申告の対象となります。

ただし、2,000万円以下の給与所得者及び退職所得以外の所得が20万円以下の人は確定申告不要です。

貸株のデメリット④手続きが面倒くさい

貸株を始めるための手続きに手間がかかることがあります。

貸株を始めるには貸株の申請が必要となり、手続きは証券会社やサービスごとに異なるため、各社の申請方法に合わせる必要があるからです。

例えば、楽天証券では証券口座の所有者であれば貸株の申し込みのみで始められますが、松井証券では貸株口座の開設が必要です。

楽天証券

※引用:楽天証券

松井証券

※引用:松井証券

また信用口座を利用した貸株サービスの手続きは、現物貸株より複雑になります。

ウェブ上で手続きが完結することがほとんどですが、利用する証券会社やサービスごとに手続き方法を確認しましょう。

貸株のデメリット⑤証券会社が倒産すると株が返済されないリスク

貸株をしている証券会社が倒産した場合、貸した株が返ってこないリスクがあります。

貸株は証券会社による「分別管理」の対象とはならず、貸し出された株は投資者保護基金による保護対象ではないからです。

分別管理とは、証券会社が自社の資産と顧客の資産を厳格に区別して管理することです。

証券会社は法律で定められた分別管理制度に則って、倒産した場合でも顧客の資産を守ることを義務付けられています。

しかし、貸株は分別管理の対象外。

証券会社が倒産した場合、貸した株が戻らない可能性に留意しましょう。

貸株のデメリット⑥株主優待がもらえない場合がある

株主優待の権利確定日に貸株をしていると、株主優待がもらえない可能性があります。

貸株をしている間、株式の名義は貸出先に変更されます。

つまり、株を貸し出すことで、保有によって得られるメリットも手放すということです。

株主優待が欲しい場合は、権利確定日に合わせて株式が返却されるよう手続きが必要です。

貸株のデメリット⑦貸株はNISA口座ではできない

NISA口座で購入した株式は、貸株することは認められていません。

NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAすべてが貸株の対象外です。

NISA口座は貸し出せない

貸株のメリット

貸株にはメリットが4つあります。

どんなメリットが貸株にはあるのか、以下にまとめました。

貸株のメリット

それぞれの貸株のメリットを深堀していきましょう。

貸株のメリット①配当金相当額をもらえる

貸株によって「配当金相当額」を受け取ることができます。

配当金相当額は、証券会社が株式の貸主に対し「配当金の代替」として支給するお金です。

貸株によって株式の名義とともに株主の権利が貸出先に移るため、貸主は配当金を受け取れなくなります。

受け取れなくなった配当金分を補填するのが、証券会社から支払われる配当金相当額です。

配当金の権利確定日に合わせて株式の返却手続きをすることもできますが、手間を惜しむ場合は配当金相当額を証券会社から受け取ることもできます。

配当金相当額は、税務上は雑所得として処理されるため確定申告が必要となります。

確定申告

貸株のメリット②無配当株でも貸株金利を受けられる

無配当株でも、貸株によって貸株金利を得られます。

通常、無配当株の利益は売却による差益に限られますが、貸株により貸株金利を得られ、運用方針次第では継続的に受け取ることが可能となります。

新興市場銘柄等の無配当株の運用方法のひとつとして、貸株金利運用をするのも良いかもしれません。

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無配当の株でもインカムゲインが得られるのは魅力的ですね。

貸株のメリット③塩漬け株の有効活用ができる

損切りのタイミングを逃した下落株「塩漬け株」も、貸株をすることで収益源として活用できます。

塩漬け株は売却すれば損失が大きく、株価が上昇するまで長期保有せざるを得ない株です。

悩みの種となりがちな塩漬け株ですが、貸株をすることで金利を得られます。

貸株による運用は、塩漬け株を活用できる有効な手段と言えます。

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塩漬け株にはナンピン買いや損切り以外にも、貸株をいう選択肢があるのですね。

貸株のメリット④自由に売却ができる

貸株は貸主の好きなタイミングで自由に売却できます。

売却のために貸株から外す手続きが必要だと思われがちですが、貸し出している最中でも売却が可能です。

保有株が貸出中に値上がりした時でも、売却益を得る機会を逃すことはありません。

貸株は最短1日から可能なので、貸し出した翌日でも売却でき、金利も日割りで受け取れます。

貸株サービスは貸主の都合でフレキシブルに利用できるのがメリットの一つです。

貸株注意喚起とは

保有株の貸株を検討する際、貸株注意喚起には気をつけましょう。

副管理人アイコン
「貸株注意喚起」とはなんでしょうか?

貸株注意喚起とは、証券金融会社が空売りの需要に対して貸株の供給が困難となるおそれあるときに出される注意喚起です。

貸株注意喚起

証券金融会社は、証券会社が空売りを含む信用取引の決済に必要な資金や株式を貸し付ける会社です。

空売りの量が多すぎると、証券会社や証券金融会社は貸株の調達が難しくなることがあります。

貸株がなくなれば空売りができません。

証券金融会社は貸株不足の状況を周知するために貸株注意喚起を発しますが、対応しきれなくなった場合は「売り禁」という空売り規制がかけられる場合があります。

売り禁となった銘柄の新規の貸株は原則できません。

なお、個別銘柄の空売り状況は「空売りネット」というサイトで確認できます。

空売りネット

※引用:空売りネット

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