トルコリラは一体どうなっている? 2018年暴落の原因を3分解説。

トルコリラ暴落

トルコリラの歴史的大暴落

まずは下記のUSDTRY(米ドル/トルコリラ)日足チャートをご覧ください。これは、1ドルあたりのトルコリラの価格を示す図なので、折れ線グラフが上がれば上がるほど、トルコリラの価値が下がっていることを意味しています。

トルコリラの価値が急落

これを見ればわかると思いますが、USDTRYは今年4月に4.00を超えて以来、急激に上昇を続けています。つまり、トルコリラの価値が急激に下がっているのです。8月中旬にはついに7.00を超えました。その後、いったん反発して戻すのですが、再び上昇し、この記事を書いている2018年9月現在、6.50前後で推移しています。

このトルコリラ急落がいかに異常なものか、もう少し長期のチャートで見てみましょう。下記の画像を見てください。これはUSDTRY月足チャートです。2010年代に入ってから、トルコリラは徐々に下落しつつあったのですが、それが今年に入って急落しているのが分かります。トルコ経済にとって2018年は歴史的な年となっているわけです。

トルコリラの急落がわかるUSDTRY月足チャート

トルコ政府の利上げ拒否

トルコリラ暴落の背景として挙げられるのは次の3点でしょう。第1は「利上げ拒否」です。トルコ経済を見ると、昨年2017年からインフレ率が高まっていました。インフレとは物価の上昇ですから、通貨価値の下落をも意味します。こうした場合、中央銀行の手によって政策金利を上げ、物価も通貨価値も安定させるのがセオリーです。

しかし、今年6月の大統領選で当選したエルドアン大統領は「利上げは景気を悪化させる」として、政策金利を据え置きたい意向を出します。その結果、トルコリラはますます売られることになったのです。

アメリカによる経済制裁

第2は「アメリカ」です。こちらの方がもっと大きな原因でしょう。現在、トルコ政府は、アンドリュー・ブランソンという米国人牧師を2016年10月より身柄拘束し続けています。2016年7月のクーデタ未遂事件(当時のエルドアン政権の転覆を狙って軍人グループが起こした事件)に関わり、テロ、スパイ、破壊活動の罪を犯したというのが理由ですが、本人は容疑を否定しています。

アメリカのトランプ政権は、牧師の釈放をトルコに対して要求したのですが、エルドアン大統領はこれを拒否しました。そこでトランプ政権は、今年の8月からトルコに対して関税引き上げという「経済制裁」を始めたのです。

これがトルコリラの売りを加速させ、同月の大暴落の主因となったと見られています。アメリカ政府は「牧師を解放すれば、経済制裁は直ちに解除されるだろう」と言っていますが、現在のところ、牧師釈放の動きは見られません。

エルドアンの強権政治

ここまで読めば分かると思いますが、第3の原因として「エルドアン」を挙げざるを得ません。政策金利にしろ牧師問題にしろ、エルドアン大統領の意固地な態度が「悪手」となって、トルコリラ暴落を招き寄せたと見ていいでしょう。

トルコリラ暴落第3の原因

Recep Tayyip Erdoğan (1954)

レジェップ・タイイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdoğan, 1954-)は、2003年から2014年までトルコ首相を務め、2014年から大統領の地位に就いています。彼の首相時代にトルコ経済が繁栄を極め、エルドアンはその政治手腕を高く評価されていましたが、次第に強権的で独裁色の強い政治を好むようになります。

大統領に就任した後は、憲法を改正して、大統領の権限を拡大させました。中央銀行の金利政策に介入したり、娘婿を財務相に据えるなどといったことも、国際社会からは疑問視されています。こうしたエルドアン政権の強権体制がトルコリラ下落の背景にあることも押さえておくべきでしょう。今後もエルドアンの態度1つでトルコリラは大きく動く可能性があり、投資家として目が離せない状況です。

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