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上場廃止の株はどうなるの?
(最終更新日:2021/8/31、元記事:2021/5/14)

上場廃止の株はどうなるのでしょうか?
心配でたまりません…

上場廃止の株がどうなるのか?
もし自分が上場廃止の株を持っていたら、投資家としてどうすれば良いのか?
さくらくんのように心配でたまらないことでしょう。
大切なことは、上場廃止に関する正しい知識を持ち、冷静に行動することです。
あわてる必要はありません。
焦って感情的な行動を取ってしまうことが損失を膨らませることにつながります。
そうならないように、上場廃止株についてわかりやすく解説していきます。
★持ち株が上場廃止になって困っている人
★上場廃止の可能性が高い株を持っている人
★上場廃止になった株への投資を考えている人
上場廃止とは
上場廃止の株がどうなるのかを話す前に、上場廃止とは何かをかんたんに解説します。
かんたんに言うと、上場廃止とは証券取引所で株の取引ができなくなることです。
上場廃止というと、倒産などの経営破綻が原因というイメージが強いかもしれません。
しかし、実際には上場廃止になるケースは経営破綻に限らず、MBOや親会社による完全子会社化など経営戦略的に上場廃止とすることもあります。
上場廃止後の株はどうなる?
上場廃止が決定した株は、証券取引所によって「整理銘柄」に指定されます。
整理銘柄になると、約1か月後に上場廃止となり取引できなくなります。
ただし、上場廃止になっても株主の権利は残ります。
★議決権
★利益配当請求権
★残余財産分配請求権
などです。

上場廃止決定後の株価のうごき
◆民事再生・債務超過など、ネガティブ要因が上場廃止理由の場合
株主による売りが殺到し、ほぼ間違いなく株価はストップ安の暴落になります。
◆TOB・MBOの場合
株価は暴落せず、TOB価格/MBO価格に寄せる形で急上昇することが多い。

上場廃止の種類6パターン
上場廃止の株はかならずしも株価が急落するわけではありません。
上場廃止の株がどうなるのか?
その答えを詳しく知るためには、「上場廃止のパターン」を知る必要があります。
パターンによって株価の動きがかわってくるからです。
上場廃止には大きくわけて6パターンあります。
★他社による買収(敵対的TOBなど)
★MBOによる上場廃止
★企業合併による消滅会社となった場合
★買収防衛などの経営戦略上の理由
★親会社による完全子会社化
★破産や倒産、債務超過など上場廃止基準に抵触

他社による買収(敵対的TOBなど)
他社によるTOBの場合、株価は上昇することがほとんどです。
その理由は、買収する側が株価にプレミアをつけて株を募集するからです。
例えば、株価1000円のA社株に50%のプレミアをつけ、1株あたり1500円で買い取ることなどを行います。

MBOによる上場廃止
MBOとは、経営者(陣)が既存株主から自社株式を買い取り、オーナー経営者になる行為です。
※MBO=マネジメント・バイアウト(経営陣買取)
買収防衛や株価が安いままで放置されるなど、上場するメリットを感じられなくなった場合などにMBOが実施されることがあります。
MBOで上場廃止になる株はどうなるのか?
TOB同様、経営陣がプレミアをつけて株を買い取るため、株価は上昇します。
企業合併による消滅会社となった場合
M&Aにより、吸収合併される企業の株は上場廃止となります。
この場合、「合併する企業:合併される企業」の合併比率が「1:5」であれば、合併される消滅企業の株主には5株に対して1株の存続企業の株式が割当てられます。

買収防衛などの経営戦略上の理由
株式を上場するということは、基本的にだれでも自由にその企業の株を買えることを意味します。
株を買う人の中には、買収を目的に株を買い進める投資家もいます。
経営権を奪われたくないと考えた上場企業は、買収防衛策としてMBOによる上場廃止を選択することがあります。

親会社による完全子会社化
最近はコンプライアンスや経営戦略上の問題などから、親子上場解消(親会社による完全子会社化)の傾向が高まっています。
記憶にあたらしいところでは、伊藤忠商事がファミリーマートを完全子会社化した例があります。
ファミマ上場廃止の記事はコチラ
↓↓↓
ファミマ上場廃止へ!伊藤忠TOBで空売り投資家は買い戻し地獄
完全子会社化による上場廃止で株はどうなるのか?
プレミアを付けた買取価格に寄せる形で株価が上昇していくケースがほとんどです。

破産や倒産、債務超過など上場廃止基準に抵触
上場廃止株のイメージはこれが一番多いのではないでしょうか。
上場企業が破産・倒産・債務超過などの上場廃止基準に抵触すると、上場廃止されることになります。
上場廃止の条件については次章で詳述します。
上場廃止基準とは
「上場廃止」には、さまざまなパターンがあることをお伝えしました。
ここでは、上場廃止の理由の中でも、もっともイメージの強い倒産や債務超過などについてくわしく解説していきます。
その中でも、東証が定める上場廃止基準についてご紹介しましょう。
上場廃止基準を理解していれば、上場廃止になりそうな株に目星をつけることができるようになるかもしれません。
【株主数】
★400人未満
【流通株式数】
★2000単位未満
【流通株式時価総額】
★5億円未満
【流通株式比率】
★5%未満
【時価総額】
★a 10億円未満である場合、9か月以内に10億円以上とならないとき
★b 上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合、3か月以内に解消されない場合
【債務超過】
※後述
【売買高】
★a 最近1年間の月平均売買高が10単位未満
★b 3か月間売買不成立
【有価証券報告書等の提出遅延】
★監査報告書又は四半期レビュー報告書を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合
【虚偽記載又は不適正意見等】
★a 有価証券報告書等に虚偽記載した場合に、すぐに上場廃止しなければ市場秩序の維持が困難であることが明らかだと東証が認めるとき
★b 「監査報告書」または「四半期レビュー報告書」に「不適正意見」「意見の表明をしない」旨等が記載された場合に、すぐに上場廃止しなければ市場秩序の維持が困難であることが明らかだと東証が認めるとき
【特設注意市場銘柄等】
★a 特設注意市場銘柄の指定要件に該当するのに、内部管理体制等について改善の見込みがない場合
★b 特設注意市場銘柄に指定中、内部管理体制等について改善の見込みがなくなった場合
★c 特設注意市場銘柄に指定されたのに、内部管理体制等について改善されなかった場合
【上場契約違反等】
★a 上場企業が重大な違反を行った場合、新規上場申請等に係る宣誓事項について重大違反を行った場合、上場契約の当事者でなくなる場合
★b 上場企業が新規上場時に宣誓した事項について違反を行い、新規上場に係る基準に適合していなかった場合に、1年以内に新規上場審査に準じた上場適格性の審査に適合しないとき
【その他】
★破産・再生・更生手続きの開始
★事業活動の停止
★銀行取引停止


上場廃止の株がどうなるのか?
これを知るためには、東証のルールを知る必要がありましたので、上場廃止基準についてご説明しました。
その中でも、クロサキが要注目しているのは以下の4つの項目です。
★破産・再生・更生手続きの開始
★事業活動の停止
★銀行取引停止
上場廃止になりそうな株には兆候が出ていることが多々ありますので、しっかりと覚えていきましょう。
上場廃止基準①「債務超過」
東証HPから引用すると
“債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)”
引用元:東証
とあります。
つまり、債務超過に陥った場合、1年以内に債務超過を解消しないと上場廃止基準に抵触することになります。
上場廃止基準②「破産・再生・更生」手続きの開始
★上場企業が会社の「破産手続」「再生手続」「更生手続」を必要とするに至った場合
★上記に準ずる状態になった場合
このどちらかの状態になった場合
上場廃止基準③「事業活動の停止」
上場企業が事業活動を停止、またはそれに準ずる状態になった場合
上場廃止基準④「銀行取引停止」
銀行取引停止の株がどうなるのか?
下記の基準に抵触すると上場廃止への流れを進むことになります。
★上場企業が発行した約束手形が不渡りとなり銀行取引が停止された場合
★上記理由により、銀行取引の停止が確実となった場合


上場廃止までの流れ
上場廃止で株がどうなるのか?
それには、上場廃止までの過程を知ることが大切です。
債務超過の場合
上場企業が債務超過に陥り、1年以内に債務超過の状態が解消されない場合は監理銘柄に指定されます。
監理銘柄とは、上場廃止基準に該当する恐れがある場合に、投資家にその事実を周知するため、証券取引所により指定された銘柄です。
監理銘柄に指定されても、通常どおり株式の売買は可能です。
債務超過になった後の流れを図式にしました。
監理銘柄になっても、その後に上場廃止基準から脱出できれば監理銘柄を解除となります。
しかし、改善が見られない場合は整理銘柄に指定され、一か月後に上場廃止となります。
上場廃止が決定されると株価は暴落します。
そして整理銘柄となる約1か月の間、マネーゲームになる可能性があります。
なぜなら、たとえば株価が5円まで下落すれば、1円上昇するだけで利益率20%です。
1円の上下の与える損益率のインパクトが大きいため、マネーゲームになりやすくなります。


補足:上場廃止猶予期間とは?
TOBやMBOではなく、債務超過などによる上場廃止について補足します。
債務超過が続き、上場維持基準に抵触すると上場株は
上場廃止猶予期間
が設定されます。
猶予期間は1年。
この期間中に債務超過の解消などがされ、上場維持基準を満たせれば猶予期間から脱出できます。
しかし、状況が改善されず、上場廃止猶予期間を過ぎてしまった場合
株は上場廃止となります。
上場廃止になると空売りはどうなる?
倒産などで上場廃止になる場合は、株価が暴落します。
となると、空売り倒産企業の株でしたら大儲けではないの?
と思う方もいることでしょう。
上場廃止株と空売りの関係についても解説しておきましょう。
上場廃止決定前に空売りしていた場合
上場廃止決定前に売り建玉のポジションを持っている場合、
2つのパターンが考えられます。
★整理ポスト期間中に買い戻す
★上場廃止日まで持ち越す
上場廃止日まで買い戻さなかった場合は、当日に強制決済になります。
上場廃止決定後の空売り
整理ポスト銘柄になると、空売りはできなくなります。
さらに多額の逆日歩が発生するため、注意が必要です。
過去には、上場廃止決定後に1株50円の逆日歩が生じたことがあります。
・株価100円で100株空売り
・逆日歩50円
・株価1円で買い戻し
・株価が100円から1円まで下がるのに1週間(5営業日)
上記の条件だと
空売りの損益:100円×(100円-1円)=9900円
逆日歩:100株×50円×5日=25000円
9900円の利益から25000円の金利を引くと、15100円の赤字
このように、計算するだけでも赤字になる場合があります。
自分の持ち株が上場廃止になったら?
もし自分の保有株が上場廃止になったらどうなる?
その答えは…
倒産関連によって上場廃止になる場合は株価暴落
TOB・MBOなどによって上場廃止になる場合は株価急騰
という対照的な値動きになることでしょう。
TOBやMBOなどの場合、株の買取に応募すれば募集価格で買い取ってもらえます。
応じない場合、そのまま保有することも可能です。
倒産して廃業になってしまう場合は、株は紙切れ同然となります。
上場廃止株の再上場。100%減資と99%減資の違いとは
破産や倒産などで上場廃止になるとき
一般的には「100%減資」か「99%減資」が行われます。
100%減資の場合、株主の権利は全て失われ、保有株は価値がゼロに。
99%減資の場合、株主の権利は守られます。
しかし、現実には新株を大量に発行することが多く、保有株が希薄化されることが多くなります。
近年の例ですと、JALは100%減資を行って既存株主を退場させました。
その後、経営再建し再上場しましたが、旧株主は報われませんでした。
99%減資の場合、既存株主が救われる可能性はわずかにあります。
上場廃止後に経営再建に成功して再上場。
再上場後も業績が伸びて株が人気銘柄になれば、報われるかもしれません。
ただ、現実的には可能性が低いのと、長い年月がかかります。
上場廃止になりそうな株を予想した投資


上場廃止になりそうな株への投資について解説していきましょう。
上場廃止が決定すると株価が大きく動きます。
大別すると
★破産・再生・更生手続きの開始 ⇒ ⇒ 株価急落
になると考えられます。
言い方をかえれば
★破産・更生をする銘柄を事前に空売りできていれば大儲け
ということです。
はたしてこんな戦略が可能なのでしょうか。
現実的なことをいうと、これは理想であり、実現するのは難しい戦略です。
しかし、
絶対に不可能とは言い切れません。
理由は2つ。
★理由1:TOBになりそうな銘柄の見つけ方が存在する
★理由2:破産する企業には、予兆が沢山ある
つまり、上場廃止になりそうな株への投資方法は2つ。
◎TOBしそうな株を見つけて買う
◎倒産しそうな債務超過企業に空売り
この2つになります。
親子上場の解消も完全子会社化によって上場廃止となりますので、事前に上場廃止になりそうな株(親子上場解消になりそうな株)を見つけられればチャンスとなるでしょう。
※TOB銘柄の見つけ方については下記記事で詳しくまとめています。
↓↓↓
★TOB銘柄の見つけ方 TOB候補の共通点とは?
※親子上場解消の予想については下記記事で詳しくまとめています。
↓↓↓
★次にくる親子上場解消の候補(銘柄)を投資診断士が徹底予想
倒産・破産しそうな企業については、決算書や四季報などに「疑義注記」「重要事象」などの文言が記載されていますし、業績を調べればすぐにわかります。
特にキャッシュが枯渇している企業は倒産リスクが高まるので、キャッシュフロー計算書、現金預金のチェックは必須です。
「買い」でも「空売り」でも、先回りしたトレードはハードル高めですが不可能ではないと思います。
チャレンジしてみたいけど、自信がない方もいることでしょう。
そういう方は、AIの力を試してみるのもありかもしれません。
「話題株セレクト」というAIロボでは、大きな上昇・大きな下落が想定される銘柄を自動で抽出してもらえます。
話題株セレクトの実力を検証したことがあるので、ご興味があれば下記記事を参照してみてください。
↓↓↓
話題株セレクト 期待のテーマ株の選定力に投資診断士も納得
上場廃止の株がどうなるか?
いちばん株価が上がる⤴️のはTOB合戦になった時ですかね?価格の吊り上げはおいしい^_^
パターン別に紹介されてておもしろいですね。ぶっちゃけ上場廃止で株がどうなるかはケースバイケースだけど参考にはなりました。
>小僧寿しさん
コメントをありがとうございます。
そうですね、上場廃止の株がどうなるかはケースバイケースであることも多いかと思います。
大事なことはその背景を知ることですね。TOBの場合は買収合戦になる場合もまれにあるので冷静な分析が必要です。
上場廃止の株がどうなるかある程度は知っていたつもりだったが、甘かったです。知識の欠落を補完できました。
>上場廃止はどうなる?さん
お役に立てたようで良かったです。随時情報更新していきますのでよろしくお願いいたします。
上場廃止は親子上場解消のながれで増えるかもしれませんね
>特命希望さん
コメントをありがとうございます。
そうですね、親子上場はコーポレートガバナンス上も良いことではありませんので、流れがつづく可能性はありそうです。
下記の記事でも詳しく書いてありますので、ご興味があればチェックしてみてくださいね。
↓↓↓
次にくる親子上場解消の候補(銘柄)を投資診断士が徹底予想