“インフレと株価の関係”
“インフレと金利の関係”
“インフレと株価と金利の関係”
インフレや金利上昇とメディアで報道されていても、この3者の相関関係ってむずかしいですよね?
2022年2月現在、実体経済もマネー経済もインフレと金利上昇の影響がじわじわ出てきています。
身近な商品の値上げの例だけでもこれだけあります。
※出典:ヤフーファイナンス
インフレと金利は株価にも影響をあたえます。
そこで、インフレと株価と金利の相関関係について解説するとともに、インフレに強い株式銘柄をご紹介していきます。
目次
なぜ今、インフレと金利上昇なのか?
2022年2月現在、世界的にインフレが加速しています。
2022年1月の速報値では
国内企業物価指数:8.6%
米国消費者物価指数:7.5%
と高いインフレ率になっています。
下の表は日本の企業物価指数と米国の消費者物価指数です。
<日本の企業物価指数>
※出典:日本銀行調査統計局
<米国の消費者物価指数(CPI)>
※出典:ヤフーファイナンス
どちらも2021年4月ごろから物価の上昇が進みはじめ、
となっています。
これは前年同月比で物価が8.6%、7.5%上昇していることを意味します。
これまで米国の物価上昇率は2%前後でした。
日本の物価も低く抑えられていました。
それが突如としてインフレ経済に。
なぜそんなことになったのでしょうか?
その理由を解説しましょう。
インフレ要因として、以下の4つが考えられます。
「物流の供給混乱」
「脱炭素」
「米中対立」
「金融政策」
「物流の供給混乱」
コロナ禍で低迷していた個人消費が経済活動の再開で持ち直し、貨物量の急増やコロナ感染などによるドライバー不足により、世界各地でモノ不足が発生。インフレの要因となっている。
そのせいで、世界経済のバロメーターとよばれる、ばら積み船の運賃指標「バルチック海運指数」も大きく上昇しました。
「脱炭素」
脱炭素を急速に進めるあまり、今はまだ必要な化石燃料の供給が減ってしまい、需要が供給を上回る状況となっている。
「米中対立」
米中対立による製造業の供給ネットワーク分断もインフレ要因の一つと考えられます。供給網が分断されると、企業はリスク回避のために複数の調達先を確保するように動き、生産コストが上昇して製品価格にコストが転嫁されることになります。
「金融政策」
2020年の「コロナ・ショック」以降、世界各国の中央銀行は大規模な金融緩和(量的緩和)政策を取ってきました。量的緩和とは、中央銀行がマーケットに大量に資金を供給することで景気を刺激する政策です。
ただ、一般的に物価は貨幣価値とは反対の動きをするため、貨幣供給量が増えると貨幣の価値が下がって物価が上昇します。
インフレと株価の相関関係
インフレと株価には相関関係を金利の話を交えて解説していきます。
いっぺんにインフレと株価と金利の話をすると、頭がこんがらがります。
したがいまして、「インフレと金利」、「金利と株価」の2段階にわけて解説をしていきます。
インフレと金利の相関関係
まずは「インフレ(物価)と金利」のお話をしていきましょう。
下にインフレと物価の2つの相関図を用意しました。
上の相関図から言えることは、物価上昇率(インフレ率)が預金金利を上回る場合は、現金の価値が減るので今買った方がお得ということ。
そうなると、お金を使う人が増えるので銀行からお金が減っていきます。
↓↓↓
銀行は金庫からお金が減りすぎると困るので、高い利子を付けて預金をしてもらうように促します。(金利上昇)
上の相関図から言えることは、物価上昇率(インフレ率)が預金金利を下回る場合は、現金の価値が増すので1年後に買った方がお得ということ。
そうなると、お金を使う人が減るので銀行の金庫にお金が増えます。
↓↓↓
銀行は高い金利を付けて預金してもらう必要がなくなるので、金利を下げます。(金利低下)
金利と株価の相関関係
金利と株価の相関を、図をつかって解説していきます。
一般的に金利と株価の関係は以下のように考えられています。
ここではもう一歩踏み込んだ理論もご紹介していきましょう。
日本テクニカルアナリスト協会元会長、浦上邦雄氏が提唱した4つの相場を用いてお話します。
4つの相場とは「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」を指します。
それぞれの相場の解説と金利と株価の関係を下の相関図にまとめました。
【金融相場】
景気後退局面末期⇒業績低迷が続くが、金利低下を背景に株価上昇
【業績相場】
景気拡大局面⇒金利は上昇に転じるが、業績拡大を受けて株価上昇
【逆金融相場】
景気拡大局面末期⇒金利上昇傾向が鮮明になり業績拡大は続くが、株価は下落
【逆業績相場】
景気後退局面⇒金利は低下するが、業績低迷が止まらず株価下落
この「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の相場は1つのサイクルとなっているのが特徴です。
インフレメリットを受ける銘柄の特徴
インフレ懸念が広がるなか、株式投資で利益を上げたいのならインフレメリットのある銘柄を探すのがセオリーです。
では、インフレメリットを受ける銘柄にはどんな特徴があるのでしょうか。
4つの特徴をまとめました。
金融セクター
資源関連
好財務企業
この4つの特徴を詳しく解説していきましょう。
インフレメリット銘柄「値上げできる会社」
インフレメリットのある会社の特徴の1つ目は、値上げのできる会社。
日本ではバブル崩壊後の30年間にわたってデフレ経済が続いていたため、消費者も会社経営者も「値上げ」に対するアレルギーが相当なものです。
この記事の冒頭で、日本の企業物価指数が8.6%(22年1月)だとご紹介しました。
それに対して、同月の消費者物価指数は0.5%(前年同月比)です。
普通に考えれば、企業にとってはモノの調達コストや生産コストが8.6%も上昇しているので、販売価格に転嫁するはずです。
となると、消費者物価指数も企業物価指数に比例して上昇するはず。
しかし、両社の差はとても大きいことがわかります。
これは企業の経営者が客離れをおそれ、価格に転嫁できていないことの証左。
※出典:総務省統計局
なぜ客離れをおそれるのか?
その理由は価格競争せざるを得ない商品やサービスで勝負しているからです。
・多少値上げしても客が離れない圧倒的なブランド力
・他社がまねできない技術や製品を持っている
・独占的なシェアを持っている
などの強みがあれば、コスト増を価格に転嫁できます。
そうした銘柄にはインフレメリットがあるといえるでしょう。
インフレメリット銘柄「金融セクター」
インフレになると金利上昇につながることを自動車の例で解説しました。
そんな「インフレ⇒金利上昇」のメリットを最も受けやすいのが金融セクター銘柄です。
その理由をまとめたのが下図です。
・安い金利で金を借り、高い金利で貸し出すことで利ザヤが拡大する
・融資件数が増え、金利収入が増大
・インフレによる資金需要拡大で、資金引き出しなどの手数料収入が増える
・保有株(金融資産)の資産価値や増配などにより収益拡大
金利上昇の際にはすなおに銀行株は買いというのが投資戦略のセオリーかと思います。
インフレメリット銘柄「資源関連」
インフレは物価が上昇を続けること。
天然資源や農業資源などのコモディティ(商品)に強い石油株・鉱業株・総合商社株などは「資源関連株」としてインフレのメリットを受けやすいセクターです。
たとえば、石油株などは原油価格が上がれば、コスト増大分を価格に転嫁します。
最終消費者である私たちは、値段が上がってもガソリンや暖房用の石油などを購入せざるを得ないので客離れが起きにくい業界といえるでしょう。
下のチャートは石油資源開発と代表的な原油価格指数WTIの比較です。
※出典:トレーディングビュー
原油価格の上昇につれて、石油資源開発の株価も上昇しています。
資源関連株がインフレメリット株であることがお分かりいただけると思います。
インフレメリット銘柄「好財務企業」
インフレメリット銘柄の最後にご紹介するのは「好財務企業」。
なぜ好財務企業なのか?
しつこいようですが、インフレになると金利上昇につながることをお話してきました。
「金利上昇 = 借金企業の返済負担が増える」
という図式が成り立ちます。
つまり、好財務であれば借金も少ない(ゼロを含む)。
さらに、保有している金融資産からの金利収入なども増えて有利に働くわけです。
インフレに強い株式銘柄
最後にインフレに強い株式銘柄の中から期待のできる銘柄10選をご紹介しましょう。
三井物産(8031)
アサカ理研(5724)
INPEX(1605)
オリエンタルランド(4661)
フェローテックホールディングス(6890)
大阪ソーダ(4046)
旭有機材(4216)
ナブテスコ(6268)
オリンパス(7733)
★銘柄特徴★
【三菱UFJフィナンシャルグループ】
・インフレと金利上昇により、利ザヤ拡大
・金利上昇により資産運用の収益改善
【三井物産】
・鉄鉱石や原油などの資源権益を多数保有
・ウクライナ情勢などの影響でコモディティ高が継続
【アサカ理研】
・金価格が高騰するなか、都市鉱山から貴金属回収する技術に強み
・2022年もコモディティの市況高の恩恵を受ける可能性大
【INPEX】
・原油・天然ガス開発の国内最大手
・原油・天然ガス高の恩恵を受け、業績良好
・ウクライナ問題が長引くと、長期原油高の恩恵が増す
【オリエンタルランド】
・2022年2月東京ディズニーランド・ディズニーシーの入園者8億人突破
・度重なるチケットの値上げでも客離れが起きない根強い人気
・コロナ終息で入場制限が解除されれば、増収増益の幅の拡大は手堅い
【フェローテックホールディングス】
・半導体需要が引き続き旺盛
・同社の主力製品「真空シール」は、半導体に不可欠な機能部品であり、世界シェア60%と価格競争せずにいられる技術を持っている
【大阪ソーダ】
・基礎化学品から医療分野まで、高シェアのニッチ商品群を保有する強みがある
・ニッチかつ高シェア⇒コスト高が生じても価格に転嫁しやすい
【旭有機材】
・プラスチックバルブで独占的なシェアを保有
・独占的シェアなので、インフレでも価格転嫁しやすい
・プラスチックバルブは半導体工場における超純水配管にも使用される
・四季報2022年初春号に「管財は好採算の半導体向けが絶好調」との記述あり。
【ナブテスコ】
・産業ロボット用精密減速機で世界シェア60%
・価格競争に巻き込まれにくい技術力の高さを有する
【オリンパス】
・消化器内視鏡の世界シェア70%と圧倒的。
・技術の優位性が高く、価格転嫁しやすい
・事業売却など資源の集中により、内視鏡などの稼げる事業への投資が加速