ベンチャー企業とスタートアップ企業の違いとは?

ベンチャー企業 スタートアップ企業

近年、投資雑誌やビジネス雑誌を読んでいると「ベンチャー企業」という言葉とは別に「スタートアップ企業」という言葉もよく見るようになりました。

ベンチャー企業は「新興の小規模企業」といった意味合いで使われることが多いですが、では、スタートアップ企業はいかなる意味なのでしょうか。ベンチャー企業との違いはなんでしょうか。

Ventureの本質は、リスクある目標への冒険だ

Ventureの本質は、リスクある目標への冒険だ

ベンチャー企業とは?

ベンチャー企業の歴史的由来

歴史を振り返ると「ベンチャー」という言葉が日本で使われ始めたのは、1970年代のこと。当時、気鋭のビジネス研究者だった清成忠男氏、平尾光司氏、中村秀一郎氏らが「創造的新規開業企業」のことを指して「ベンチャー企業」「ベンチャービジネス」と呼ぶようになり、それがやがて日本のビジネス社会に浸透していきました。

なお、1970年代は「第一次ベンチャーブーム」と呼ばれる時代で、新しいアイデアやテクノロジーを武器とする新興企業が、ベンチャーキャピタルから出資を受けて成長していくようになります。やがて、こうしたベンチャーキャピタルから支援を受けた企業のことを指して「ベンチャー企業」と呼ばれるようにもなりました。こうして「ベンチャー」という言葉が、日本社会で市民権を持つようになるのです。

ventureは冒険的・投機的企業のこと

そもそも英語の”venture”とは「冒険的企業」「投機的企業」の意味です。もしくは「リスクの高い事業・活動」のことです。そこには「新興の」とか「小規模企業」といった意味合いはありません(もちろん、冒険的企業・投機的企業は新興企業である場合が多いですが)。

なお、英語圏でよく使われる言葉としてventure capitalがあります。先ほど上で述べた「ベンチャーキャピタル」のことですね。このベンチャーキャピタルは、将来的に高い成長が見込める企業に対して、冒険的・投機的に投資していく企業のことです。アメリカで”venture”と言えば、日本人が言うところの「ベンチャー企業」ではなく、通常はベンチャーキャピタルのことを指します。

「ベンチャー企業」は和製英語

つまり、日本社会でよく使われている「ベンチャー企業」は、和製英語にすぎません。英語圏におけるもともとの意味を誤用して表現された日本語です。先ほど言ったように、日本社会で使われている言葉「ベンチャー企業」は「新興の小規模企業」といった意味合いですが、英語圏の人間に「a venture company」と言っても、その意味はほとんど伝わらない可能性が高いでしょう。

もちろん「和製英語=使ってはダメ」ということではありません。むしろ、いったん社会的に流通してみんなが当たり前のように使っている言葉であれば、それは言葉としての価値を持っていると言えます(例えば、このブログでも和製英語は使われています)。

しかし、一方で、これだけのグローバル時代になって、投資やビジネスといったものが国の垣根を越えて行われるのが当然の時代に、誤った英語の使い方がそのまま放置されていると、どのようなトラブルが起こるか分かりません。

また、日本人の英語能力を弱めるファクターともなってしまいます。今すぐ日本社会から和製英語をすべて取り除くというのは非現実的ですが、徐々に使う頻度を減らしていく努力が必要かもしれません。

Startupはスピーディな成長を期待されている

Startupはスピーディな成長を期待されている

スタートアップ企業とは?

「スタートアップ」は英語の「startup」のこと

そうした背景もあって、近年、日本のビジネス社会で浸透しつつある言葉の1つが「スタートアップ企業」です。これは、英語圏で使われているstartupをそのままカタカナにしただけですが、このstartupとは、端的に言えば「新たなアイデアやテクノロジーを有し、急激な成長が見込まれる新興の小規模企業」のこと。私たちがイメージするところの「ベンチャー企業」の意味と極めて近いですね。

要するに「スタートアップ企業」とは「ベンチャー企業」を英語の正しい使用方法にしたがって正確に言い直したものとも言えるでしょう。英語の誤った用法を嫌うビジネスパーソンほど「スタートアップ企業」という言い方を好むようです。

startupは「加速度的な成長が期待され世界を変えていく小規模企業」

startupについて、もう少し詳しく説明しましょう。日本では、単なる「小規模の新興企業」を指して「スタートアップ企業」と呼ばれることもあります。

しかし、アメリカにおけるstartupはもう少し定義がキビしい。何が求められるかというと、スピードです。現時点では小規模であっても、数年以内に加速度的に成長していくことが期待されています。小規模のままでズルズルと停滞している、もしくは低成長のままで止まっているような企業はstartupではありません。ただの零細企業(small business)です。

startupには、もう1つの特徴があります。

新たなアイデアやテクノロジーによって、世界に大きな影響を与えること、世界を変えることが期待されている点です。

例えば、GoogleやAmazonが分かりやすいですね。両社とも、最初は小さな小さな企業でした。
しかし、新たなアイデアやテクノロジーによって、私たちの世界を変えていきました。単に、小さなビジネスサークルの中で細々と商売をしているだけで、世界を変えるためのアイデアもテクノロジーも持ち合わせていない企業は、startupとは言えません。「ベンチャー企業」とも呼べないでしょう。ただの零細企業です。

Unicornは一本角が生えた伝説の生き物だ

Unicornは一本角が生えた伝説の生き物だ

スタートアップはユニコーンになれるか

一般的に、スタートアップは、ユニコーン(unicorn)を目指します。

ここで言う「ユニコーン」も、近年、投資の世界でよく耳にする言葉ですね。著名なベンチャーキャピタリストのAileen Leeが2013年頃から「評価額が10億ドル以上となったスタートアップ企業」を指す言葉として使い始めました。

例えば、ここ10年の例でいえば、Uber、Airbnb、Slackなどが有名なユニコーンでしょう。
いずれも、加速度的な成長を遂げ、世界を変える力を持つパワフルな企業です。一方、日本のスタートアップ企業を見ると、ここ10年で起業からユニコーンにまで至ったのはメルカリのみとなっています。寂しい限りですね。

そのほかのスタートアップ企業は、中途半端なまま生き延びているゾンビ企業か、もしくは廃業・倒産の道を歩んでいます。「ベンチャー」「スタートアップ」・・・呼び方は人それぞれですが、いずれにせよ、競争の厳しいハイリスクな世界であることには違いがありません。

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