東京エレクトロンの株価は、今後低迷が予想されます。
まずは30日までの一週間の株価の動きについて見てみましょう。
東京エレクトロン(8035)
25日から30日までの動きは上昇傾向にありますが、楽観はできません。
東京エレクトロンはこれから厳しいと予測する理由を「需要」、「価格」、「米中貿易摩擦」の観点から説明します。
目次
東京エレクトロンの業績見通し
東京エレクトロンの通期予想は、厳しいものになることが予想されます。
東京エレクトロンは31日に4~9月の決算発表をおこなう予定で、4~9月の業績は好調をを維持するとおもわれますが、19年3月期の通期予想は下方修正される可能性が高いでしょう。
通期予想が不安視される要因のひとつは、スマートホンの需要減です。
半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、18年12月期の連結売上高を下方修正しており、韓国のサムスン電子も今年予定していた設備投資を見送る可能性が高まっています。
半導体メモリーの価格下落も、業績の悪化に拍車をかけます。
メモリーの代表である「NAND型フラッシュメモリー」は、2017年のピーク時より価格が4割ほど低下しています。
一昨年は各半導体メーカーにおける技術革新の過程で生産ラインの歩留まりが上がらず、供給不足に陥っていました。
しかし今年に入りノウハウの蓄積で歩留まりが向上したため、むしろ供給超過によって価格の下落が続いています。
米中貿易摩擦の影響
米中貿易摩擦の影響も見のがせません。
中国の半導体製造について、貿易摩擦の影響で米国からの部品輸入が難しくなるため、その分の需要が日本に回される可能性が考えられます。
現在中国は30以上の大規模な半導体プロジェクトが走っているようですが、その技術力は日米の後塵を拝します。
どれも地方政府が数千億単位で資金を供出する巨大プロジェクトであり、どの生産ラインにも日本製の部品が多く使用されています。
日米の部品供給がなければ中国の半導体プロジェクトは成り立たず、貿易摩擦によるアメリカからの輸入コスト増は、日本にとってチャンスといえます。
安全保障上の重大な懸念
しかし中国への半導体部品供給の代替は、重大な問題をはらんでいます。
29日に米商務商は福建省晋華集成電路(JHICC)が米国の安全保障上の重大なリスクになっているとして、半導体製造装置など米国製品の輸出を規制すると発表。
JHICCを巡っては、米半導体大手のマイクロン・テクノロジーが知的財産を侵害していると訴えていました
米国は中国の国家戦略「中国製造2025」を警戒しており、JHICCはその重点支援対象のひとつと目されています。
「中国製造2025」は中国が今後の10年間で、特に重要とされる10分野の産業育成に特化することを指します。
問題なのはその10分野のほとんどが軍事技術に直結することで、アメリカは警戒感を強めています。
アメリカには対中貿易の実利を重視する「現実主義派」と、中国を危険視する「強硬派」がいますが、「中国製造2025」については両派とも強い警戒感を示しています。
アメリカが安全保障上の理由で半導体の輸出を規制したとなると、当然日本はそれと無縁ではいられません。
アメリカと安保条約を結んでいる以上、輸出規制による供給不足を日本が全面的に代替できる可能性は低く、中国からの「特需」は起きないとおもわれます。
株価反転の可能性
株価反転の可能性としては、「世界のNAND市場の売上高」と「東エレク株」の連動性があげられます。
「世界のNAND市場の売上高」と「東エレク株」には一定の相関関係がみられ、NAND市場が成長すると、東エレク株も上昇する傾向があります。
NAND売上高と東エレク株は現在下降トレンドにあり、底を打つのは「来年半ばごろ」といわれています。
底を過ぎればNANDの需要回復により東エレク株の上昇を期待する声もありますが、あくまでも予想であり、どうなるかは誰にもわかりません。
東京エレクトロンについては不安要素と比較し楽観的な材料が少なすぎるので、しばらくは買い控えた方がいいようにおもわれます。