米国株の税金について、わかりやすく図を多めにして解説していきます。
米国株の税金の知識を持たず、米国株投資をはじめる人が増えているようです。
2020年の楽天証券の米国株式サービスでは、約定件数が前年比11倍、米国株取引をした投資家が同5倍にふくれあがったそうです。
※参照:最近ブームの米国株式。証券会社員に聞いた「日本株との違いとメリット」
ブームになっている米国株投資ですが、税金にかんする悩みや不安を抱える人も増えています。
米国株の税率、配当の二重課税、損益通算、確定申告のやり方など…
きちんとした米国株の税金知識がないと、払わなくて良い税金を払うリスクさえ出て来ます。
米国株投資がブームの今だからこそ、税金関係の知識もしっかり身につけておきたいところ。
この記事では、「米国株と税金」をテーマに、
・米国株の税金の基礎知識
・確定申告
・配当の二重課税の解消(控除)
といった、個人投資家が陥りやすい悩みにスポットを当てて解説していきます。
目次
米国株の税金の仕組み
米国株の税金ってどのくらいするの?
そんな問いに対する回答は下図のとおりです。
日本株と米国株の税金の比較をした表です。
日米で株取引にかかる税金はずいぶん差がありますね。
この表を用いながら、米国株の税金について語っていきましょう。
日本で米国株取引をして利益を上げた場合、配当を受けた場合には20.315%の税金がかかります。
これは日本株で売却益、配当を獲得した時と同じ税率です。
ちなみに、税率の内訳は
国税15%
地方税5%
復興特別所得税0.315% ※2037年まで
となります。
それにしても、日本株と比較すると、米国株の税金(米国内で取引した場合)はとても安い。
米国人が貯金をせず、株式投資にお金を回す理由がわかるような気がしますね。
米国株の売却益に生じる税金
米国株の売却益にかかる税金は、図にも示したとおり20.315%かかります。
これは個別株に限らず、投資信託、米国ETFでも同じです。
復興特別所得税0.315%は2037年までとなっているので、現行のままいけば2038年からは米国株の売却益にかかる税金も20%に戻ります。
ただし、岸田内閣では金融所得課税の税率を上げる政策を掲げようとしています。
確定的なことは言えませんが、報道などによると税率を25~30%程度まで上げることを考えているようです。
実現すれば米国株の税金も25~30%程度まで引き上げられることになります。
米国株の配当に生じる税金(二重課税)
表に書いた通り、米国株の配当は二重課税されます。
米国株の配当金にかかる税金は、最初に米国で課税され、次に米国の税引き後の金額に対して日本で課税されるためです。
米国側で引かれる10%の税率は、日米租税条約に基づいて決められています。
もし日米租税条約が今後改定されるようなことがあれば、米国株の税金にも変化が出る可能性があります。
米国株の配当の税金計算をシミュレーションしてみましょう。
<米国株の配当金の税金計算>
ドル円の為替レートは100円とする。
この時の、米国株Aから受け取った配当にかかる税金は?
STEP1:米国で配当に税金
米国で税引後の配当金額:100ドル – 10ドル = 90ドル
STEP2:米国で税引きされた配当に日本で課税
90ドル×100円×20.315%=1828円
最初にお伝えしたように、米国株の配当金は米国と日本で二重課税されます。
米国株の配当への二重課税を解消するため、確定申告をして「外国税額控除」を行う必要があります。
確定申告をして還付を受けないと払い過ぎた税金は戻ってきません。
払い過ぎの税金は取り戻しましょう。
米国株の二重課税を解消する外国税額控除
外国税額控除は、米国株の配当における二重課税を解消する制度です。
かんたんにいうと、米国で税引きされた10%分の還付金を受ける制度となります。

ただし、控除額には限度があり、以下の計算式で控除の限度額が求められます。
外国税額控除を受けるのに必要な書類
確定申告にて、米国株取引にかんする外国税額控除を利用するためには必要書類を添付することが求められます。
下記に外国税額控除に必要な書類をご紹介します。
・確定申告書
・外国所得税を課されたことを証明する書類
・外国税額控除に関する明細書
・国外所得総額の計算に関する明細書
・年ごとの控除限度額や納めた外国所得税を記載した書類
※参照:国税庁「外税 外国税額控除を受けられる方へ(居住者用)」
証明書類がないと、外国税額控除を受けられない可能性がありますのでご注意ください。
配当10万円なら外国税額控除で約8千円還付
確定申告で外国税額控除を利用すると、米国株の配当金はいくらくらい還付されるのか?
結論からいいますと約8000円の還付金を受けられます。
計算式を公開しますので、ご参考までにどうぞ。
ドル円の為替レートは100円とする。
米国株Bの配当にかかる税金を、確定申告で外国税額控除を利用するといくら戻ってくる?
ケース1:確定申告前(外国税額控除なし)
STEP1:米国で源泉徴収される税金:1000ドル×10%=100ドル
STEP2:米国で税引後の配当金額:1000ドル – 100ドル = 900ドル
※日本側の計算
900ドル×100円×20.315%=18283円
※米国と日本で徴収された税金の合計
10000円 (100ドル)+18283円=28283円
ケース2:確定申告後(外国税額控除あり)
1000ドル×100円×20.315%=20315円
ケース1とケース2の差額は
28283円-20315円=7968円
つまり、確定申告にて外国税額控除を利用すると、配当10万円に対して7968円の還付金を受けられることになります。
米国株の配当金が1万ドル(100万円)なら、単純に10倍した金額になります。
※1ドル=100円換算
米国株投信・ETFでは配当の二重課税が一部解消
米国株は確定申告がめんどくさい。
米国株は税金の計算がめんどくさい。
それが今までの米国株投資の常識だったと思います。
しかし、近年では米国株の税金、確定申告が昔よりも楽になりました。
ターニングポイントとなったのは、2020年1月。
米国株に対して、分配金の出る投資信託や東証に上場しているETFの二重課税が解消されたのです。
具体的には、投信やETFの販売会社側が米国株の配当の二重課税の調整を行うようになったので、個人投資家の手間が少なくなりました。
米国株の税金(二重課税)で損しない方法
米国株では配当に二重課税され、確定申告で還付を受けないと税金を多く取られてしまいます。
普段から株式投資関係の確定申告をしている人なら、慣れたものだと思うかもしれません。
しかし、米国株の税金の面倒くささを感じている人もいることでしょう。
そこで、米国株の税金、特に配当の二重課税で損しない方法をまとめて紹介します。
・二重課税されない投資信託・ETFに投資
・配当の出ない銘柄(個別株)に投資
・確定申告して還付金を受ける。外国税額控除
基本的にはこの3つの方法になります。
米国株の個別銘柄に魅力を感じているのであれば、配当を出さない銘柄に投資すれば、二重課税されることはありません。
ナスダック100に採用されるようなハイテク成長株、IPOしたばかりの銘柄などには配当を出さずに再投資に回す企業も多くあります。
無配当のグロース株か、東証に上場する二重課税を解消できるETFなどへの投資が現実的な戦略といえるでしょう。
口座別、米国株の配当の税金が一発でわかる図
米国株の配当に二重課税されるかは、あなたが利用する証券口座のタイプによって異なります。
一般口座、特定口座、NISA口座
口座別に米国株の配当に生じる税金のチャートをご紹介します。
<【口座別】米国株の配当にかかる税金(税率)>
一般NISA口座でも米国株の配当に対して米国側の10%の課税がされます。
「NISA=非課税」という先入観があると、驚くかもしれませんね。
NISAで非課税になるのはあくまで日本国内での税金になります。
米国株投資をする人は注意しておきましょう。
米国株の税金は確定申告で取り戻そう
米国株の税金について、確定申告がめんどくさいなど、苦手意識を持っている人は多いようです。
ここでは、そもそも米国株の確定申告が必要、不要?という解説から、米国株の確定申告のやり方までをご紹介していきます。
米国株の確定申告が必要・不要なケース
米国株取引に関して確定申告が必要か不要か?
ここでつまずく人も多いみたいです。
米国株投資において、確定申告が必要なケースと不要なケースをご紹介していきます。
上記した【口座別】米国株の配当にかかる税金(税率)も併せてごらんいただくと、理解が深まると思います。
確定申告が必要なケース
米国株の税金にかんして、確定申告が必要なケースは以下のとおり。
・「損益通算」を希望する際にも確定申告が必要
・損失繰越したい場合
・米国株の配当で二重課税された分を還付したとき
確定申告が必要なケースは、源泉徴収されることなく年間利益が20万円以上ある場合が基本です。
日本株や投資信託との損益通算、複数口座を使って取引している場合には、他の口座との損益通算をしたい場合にも確定申告が必要になります。
損失繰越をしたい場合にも、確定申告をする必要があります。
損失繰越は、株取引で年間損失が出た場合、翌年度以降3年間にわたって損失を繰り越せる制度です。
そして、今回の本題である米国株の配当を二重課税されているケース。
シミュレーションしたように取り戻せる税金は多いので、米国株の高配当銘柄に投資している人は特に確定申告した方が良いと思います。
確定申告が不要なケース
米国株の税金にかんして、確定申告が不要なケースは以下のとおり。
・年収2,000万円以下で給与、退職所得以外が20万円以下の場合
・利益が確定していない場合
・NISAの非課税枠を利用している場合
注意点としては、特定口座(源泉徴収あり)で取引していても、他の口座との損益通算や損失繰越をしたい場合には、確定申告が必要になることです。
米国株の売却をして利益が確定しなければ、売却益に税金は発生しません。
NISAの非課税枠以上の投資を米国株に行い、利益が出た場合には確定申告が必要になる可能性があります。
米国株の確定申告のやり方
米国株の確定申告のやり方についても、お話していきましょう。
ここではサラリーマンが一般口座を想定した米国株の確定申告のやり方について解説していきます。
米国株投資の確定申告の大まかな流れは以下のとおり。
STEP1:必要書類の用意
STEP2:確定申告書をつくる
STEP3:確定申告書を提出
STEP4:納税&還付金を受ける
STEP①必要書類を用意
米国株の確定申告をするのに必要な書類をまとめました。
<給与所得、保険関係>
源泉徴収票など
マイナンバーカード
保険料控除明細書
医療費控除の明細書
寄付金の受領証(ふるさと納税等)
<米国株関係>
外国税額控除に関する明細書
外国所得税の課せられたことを証明する書類等
国外所得総額の計算に関する明細書
各年の控除限度額や納付した外国所得税を記載した書類(繰越控除をしている場合)
金融機関の口座情報(還付を受けるのに必要)
※出典:国税庁
STEP②確定申告書をつくる
書類をそろえたら、実際に確定申告書を作成していきます。
米国株の譲渡益(売却益)を記入する際には、為替に注意しましょう。
外国株式では、購入・売却時それぞれで日本円での受渡金額を算出し、差し引いた金額を譲渡益(譲渡所得)として用いるためです。
これを計算式にすると、以下のとおり。
米国株の譲渡益 =(売却時の受渡金額×約定日の為替レート)-(購入時の受渡金額×約定日の為替レート)


<例:エヌビディアを円貨決済、外貨決済で購入>
この図はSBI証券外国株アプリのものです。
クロサキの取引履歴です。
クロサキはエヌビディア株をドルと円の両方で購入しています。
円貨決済なら日本の税金の計算に為替の問題はありませんが、外貨決済の場合には問題が生じます。
そのため、約定時の日本円の価値を選定して購入単価を導きます。
クロサキは326.10ドルでエヌビディア株を1株買いました。
受け渡し金額326.10ドルに約定日の為替レートを掛ければOKです。
次に、米国株の配当の二重課税の話をしていきましょう。
米国株の配当の二重課税を解消して還付を受けるには、外国税額控除を受ける必要があります。
<SBI証券の外国税額控除の見本>
※出典:SBI証券
上図はSBI証券のものです。
各入力項目には、以下のように記入していきます。
【国名】米国
【所得の種類】配当
【税種目】源泉所得税
【源泉・申告(賦課)の区分】源泉
STEP③確定申告書を提出
給与所得や社会保険控除、寄付金控除の記入。
そして、米国株取引における売却益、二重課税、繰越損失、損益通算などの記入が終われば、確定申告書を提出するだけです。
STEP④納税&還付金を受ける
確定申告書の提出が終われば、納税と還付金を受けて一連の確定申告は終了になります。
米国株の為替差益に税金はかかる?
米国株取引で生じる為替差益の税務上のお話をしていきましょう。
クロサキは税理士ではないので、一般的にはこうなっているという観点でお話していきます。
結論からいうと、米国株取引の為替差益については基本的に非課税になることが多いようです。
ただし、注意点もあります。
これから解説していきましょう。
米国株取引をする際、あらかじめ円をドルに換えておいてから株を買う場合があります。
<例:SBI証券の為替取引>
※出典:SBI証券
米国株の売買をした結果、円に戻すときに為替差益を得る分には問題ありません。
しかし、円をドルに換えたけれど、株取引はおこなわず、また円に戻して為替差益を得る場合には雑所得扱いとなり、課税されることがあるようです。
税制上の判断については、税務当局により異なる場合があるようで、詳細については税務署にご確認ください。
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米国株は配当の二重課税がめんどくさいですよね。確定申告が鬱になる。なので、記事にあるように無配当銘柄に投資しています。
>米国株の税金うぜえさん
コメントありがとうございます。
たしかに米国株の配当にかかる二重課税はめんどくさい面がありますね。
二重課税されない投資信託や無配当個別株に投資することは、確定申告の手間を省くやり方です。