今回は米国株の空売りできる証券会社、解禁となった米国株信用取引の全容をわかりやすく解説します。
2022年7月、日本でも米国株の信用取引がついに解禁。
米国株は空売りができないから魅力半減と思っていた人には朗報といえるでしょう。




この米国株の信用取引解禁の背景には、若い世代を中心とした米国株投資へのニーズの高まりがありました。
米国株投資を行う日本人は年々増加しています。
そこで、今回は投資家から熱い視線が注がれる米国株の信用取引の全容を解説していきます。
目次
米国株の空売りできる証券会社
(最終更新日:2022/6/24、元記事:2022/3/8)
米国株の信用取引は2022年7月から解禁となります。
日本証券業協会のルール整備が終わった段階で、サービス開始予定を発表する証券会社が連続しました。
<SBI証券とマネックス証券>
上の画像はSBI証券とマネックス証券ですが、ほかにも米国株の信用取引サービス開始に動いている証券会社はあります。
2022年6月現在でわかっている情報をまとめました。
米国株の空売りできるようになる証券会社
SBI証券:22年7月予定
楽天証券:22年7月予定
マネックス証券:22年中を予定
auカブコム証券:23年冬予定
松井証券:未定
米国株取引を扱う代表的なネット系証券会社では、松井証券を除いて信用取引サービスの開始を予定しています。
個人的な感想ですが、松井証券も将来的には参入してくるのではと思います。
同証券の場合、米国株参入が22年2月と遅かったために信用取引サービスの開始も遅れるのではと考えます。
米国株の信用取引(空売り)ができるようになる
米国株の信用取引解禁により、空売りができるようになります。
ただ、まだ各証券会社が信用取引サービスについて準備中のため、貸株手数料などについては22年3月現在ではわかっていません。
詳しいことがわかりしだい、情報を更新していきます。
さて、日本の投資家にとって、これまで米国株投資は中長期投資のスタンスがメインでした。
その理由は
売買手数料が高くてデイトレに不向き
空売りができない
という問題があったからです。
米国市場が開いているのは日本の深夜なので、相場に張り付いてデイトレやスキャルピングをすることが難しいためですね。
日本株よりも売買手数料が高いため、なるべく売買回数を減らす中長期投資がメインだったという背景があります。
特に空売り専門のトレーダーや、買いと売りを使い分けるトレーダーにとっては「米国株は空売りができない」という事実がネックになっていたフシがあります。
空売りが解禁になることで、空売りできないから米国株投資はしないという投資家も参入しやすくなりました。
米国株の信用取引(空売り)のサービス内容
米国株の信用取引の解禁にあたり、日本証券業協会が必要なルールを整備したことを上述しました。
その主な内容を以下の図にまとめました。
※参照:日経新聞電子版「米国株の信用取引、7月解禁 大型1300銘柄限定」
それぞれ詳しく掘り下げて解説していきます。
米国株の信用取引(空売り)の対象銘柄は大型株1300銘柄
米国株の信用取引は上場銘柄のすべてでできるわけではありません。
日本証券業協会が制定したルールをクリアした銘柄に絞られます。
米国株の信用取引の対象銘柄の情報をまとめました。
ダウ平均採用銘柄
時価総額50億ドル以上の大型株
これらの約1300銘柄の大型株から、証券各社は取り扱う銘柄を選ぶことになります。
流動性が高く、銘柄の情報を得やすい企業が多くなると予想されます。
証券会社によって取り扱う銘柄が異なることになりますが、アップルやアマゾンなどのおなじみの企業の株は対象になるものと思います。
米国株の信用取引のレバレッジは2倍
日本株の場合、信用取引をするのに必要な保証金率は30%となり、レバレッジは約3.3倍の取引となります。
しかし、米国株の場合は信用取引をするのに必要な保証金率は50%となり、レバレッジは2倍となります。
米国株には日本株のようなストップ高(安)という制限値幅がなく、ボラティリティ(価格の変動幅)が大きいため、レバレッジが低く抑えられています。
米国株の信用取引の追証基準(保証金維持率)は30%
最初に「保証金」と「保証金維持率」についてかんたんに解説しましょう。
★保証金とは
信用取引を行うためには、証券会社に担保を差し出す必要があります。その担保を「委託保証金」と呼びます。保証金とはこの委託保証金のことです。
★保証金維持率とは
信用取引のポジションは、株の値動きによって含み損が出ると、その損失額が委託保証金から差し引かれます。
また、信用取引では、現金以外にも株など有価証券を担保として差し出せるのですが、この担保株の価格が下がると、委託保証金の担保価値が下がります。
この時の“信用取引している金額に対する委託保証金の割合”を「委託保証金維持率」(たんに保証金維持率と呼ばれることも)
決められた「委託保証金最低維持率」を割り込むと、追証が発生することになります。
日本株と米国株の保証金と保証金維持率を見ていきましょう。
<日本株の場合>
信用買いした銘柄の株価が下がり、保証金維持率20%を割り込むと追証(追加保証金)を証券会社から請求されるのが一般的です。
<米国株の場合>
米国株の信用取引における追証基準…証拠金維持率は30%です。
米国株の場合は、レバレッジが2倍(100ドルの株を信用買いするのに50ドルの保証金必要)なので、保証金維持率はやや高めの30%となっています。
米国株は日本株よりもボラティリティが高く、ストップ高やストップ安の値幅制限がないため、こうしたルールによって投資家保護を図る目的があるものと考えられます。
米国株の信用取引の担保(代用有価証券)は日本株より10%減額
米国株の信用取引においては、代用有価証券の評価額が日本株よりも10%減額されます。


米国株の信用取引をするための担保(委託保証金)には株式などの有価証券を指す出すこともできます。
この担保として差し出す有価証券を「代用有価証券」といいます。
信用取引の担保に差し出すものが、現金ではなく代用有価証券の場合、現金よりも担保価値が下がります。
これは株価の下落などによって担保価値が目減りする可能性があるため、あらかじめ現金よりも担保価値を低く見積もるためです。
以下に、代表的なネット証券の代用有価証券の日本株の担保価値の一覧をご紹介します。
※代用有価証券として現物株を担保にすることを想定
それぞれの証券会社の70~80%の担保株の評価の掛け目が10%減額になるわけです。
つまり、米国株の信用取引の場合には「70%⇒63%」「80%⇒72%」になるものと予想されます。
ただ、22年3月現在、各証券会社から正式なアナウンスがされていませんので、正確な情報は証券会社からの発表を待ちましょう。
米国株の信用取引のメリット
米国株の信用取引のメリットをご紹介していきます。
米国株には増し担保規制がない
相場の下落時も利益を得られる
現物株のリスクヘッジに利用できる
<資金効率がよい(回転売買ができる)>
信用取引のメリットの筆頭は資金効率が良いことにあると思います。
なぜ資金効率が良いのか?
その理由は2つ。
・理由①少ない資金で株を購入できる(レバレッジ)
・理由②同じ銘柄を何度も売買できる(回転売買)
レバレッジについては、2倍の取引になりますので、100ドルの株がほしければ50ドルの手元資金で信用買いができます。
また、現物株投資では、同時に同銘柄を何度も売買することが法律上できません。
しかし、信用取引であれば同じ銘柄を複数回売買する回転売買を行うことができます。
さらに、空売りもできるようになるため相場が上昇でも下落でも利益を上げられるため、資金効率の良い取引を行えます。
<米国株には増し担保規制がない>
2022年3月現在、米国株の信用取引解禁にあたって増し担保規制の導入が発表された事実を確認できません。
日本株の場合ですと、個別銘柄が一気に人気化して信用買いが殺到した際、相場の過熱感を冷ますため、東証が「日々公表銘柄」に指定して警告を出し、それでも信用買いが増え続けると「増し担保規制」をかけます。
増し担保規制では、通常必要な保証金30%を50%に引き上げるのが一般的です。
それでも過熱感が冷めない場合には、必要証拠金を50%⇒70%(90%)に引き上げていきます。
しかし、米国株の場合には東証に上場しているわけではないのでこの範疇ではありません。
※増し担保規制(通称ましたん)については下記記事で解説
↓↓↓
増し担保の解除後に上がる株とは?【ましたん解除】
<相場の下落時も利益を得られる>
米国株の信用取引が解禁になることで最大のメリットになるのは「空売り解禁」かもしれません。
これまでは「買い」からしか入ることができなかったので、「売り」から入れるようになることで、投資戦略が広がります。
一般的に株式トレードでは、株価が上がっていく方に投資する「買い方」戦略しか方法がないより、下落にかける「売り方」戦略の二刀流の方が勝ちやすいといわれます。
個別銘柄の株価が上がりすぎだと思えば、空売りを仕掛けることも可能。
強い下降トレンド中の銘柄に、ショート(空売り)で「戻り売り」などをねらった順張りトレードすることもできます。
<現物株のリスクヘッジに利用できる>
現物株で中長期投資をしている人であれば、相場環境が悪い時に保有銘柄の空売りポジションを持つことで、株価が下がった時のリスクヘッジになります。
下の例では、A社株を5株保有している人が、3月1日に株価20ドルで3株空売りしたケース。
3月10日に株価が15ドルに下がっていますが、空売り分は利益になってダメージを相殺できます。
空売り(リスクヘッジ)していなければ、損失は25ドルになっていました。
※手数料考慮せず
ウクライナ問題やインフレ懸念など、相場に大きな不安があるけれど長期保有ポジションは崩したくない場合…
このように空売りをしてリスクヘッジを図れます。
米国株の信用取引のデメリット・リスク
米国株の信用取引のデメリットをご紹介していきます。
追証
手数料が高い
信用残高を調べる方法がない
<空売りの損失は青天井>
米国株に限らず、空売りで失敗したときの損失額は理論上青天井になります。
・資金管理
・空売りの数量
・損切りの指値注文
など、
きちんとリスク管理できていれば、空売り後に株価が上昇してしまった場合に損失を限定できます。
しかし、リスク管理を怠ったり、ミスした場合には損失が青天井であることは米国の信用取引のリスクといえるでしょう。
<追証>
「保証金」と「保証金維持率」の解説でもお話しましたが、信用取引をした後で思惑どおりに株価が推移せず、含み損が増えて「保証金維持率」が30%を割り込んでしまった場合…
追加保証金(追証)を証券会社から請求されます。
基本的にどこの証券会社も、追証は翌々営業日のまでに入金もしくは建玉の決済による解消が必要です。
クロサキが知る限り、追証のお知らせはほとんどの場合、電話できます。
電話を無視しても、出るまで毎日かかってくるのが普通です。
それでも無視すると、最悪の場合は法的手段を取られることになります。
そうならないように気をつけましょう。
※「追証」の詳しい解説をしています。
↓↓↓
追証を払えない場合どうなる?追証地獄の解消方法
<手数料が高い>
米国株の取引手数料は日本株よりもお高めとなります。
米国株の信用取引における取引手数料を各証券会社がまだ発表していません。
しかし、「日本株と米国株の現物株取引の手数料比較」、「日本株の信用取引の手数料」を参照することで米国株の信用取引の手数料が高めになるのでは?と想像がつきます。
下の比較表は、SBI証券の手数料比較です。
※参照:SBI証券
・日本株の場合、現物でも信用でも1日の約定代金が100万円以下なら売買手数料が0円
・米国株の場合、約定代金2.02ドル以下なら手数料0
・1ドル100円と仮定した場合の日米の手数料比較
<日本株・現物>
100万円の取引:手数料0円
200万円の取引:手数料1,238円
300万円の取引:手数料1,691円
400万円の取引:手数料1,986円
<米国株・現物>
1万ドルの取引:手数料22ドル(2200円)※上限額
2万ドルの取引:手数料22ドル(2200円)※上限額
3万ドルの取引:手数料22ドル(2200円)※上限額
4万ドルの取引:手数料22ドル(2200円)※上限額
※参考:1ドル100円と仮定すると、一日の約定代金4,450ドルで上限22ドルに達する。


なお、おとなの株ラウンジが調査した結果、米国株現物取引の手数料体系は
SBI証券
楽天証券
マネックス証券
松井証券
の4社とも同じでした。※2022年3月現在
<信用残高を調べる方法がない>
米国株の信用取引の場合、信用残高を調べる方法がないというネックがあります。
日本株の場合は、ご利用の証券会社のアカウントやヤフーファイナンス、日証金HP、空売りネットなどのサイトにいけばすぐに情報が手に入ります。
【信用買いが大幅増加している場合】
・将来の売り圧力が強い
・機関投資家から空売りで狙われやすい
【信用売りが大幅増加している場合】
・将来の買い圧力が強い
・機関投資家が空売りを増やしている場合、まだ下がる可能性が高い
信用残高から投資家が読み取れる情報はいろいろあります。
しかし、その信用残高情報が米国株の場合、なかなか入手できません。
たとえば、SBI証券の米国株アプリなどで銘柄情報を見ても載っていません。
もちろん、日本株の場合は載っています。
情報を入手しづらいということは、空売り戦略を立てるファンダメンタル的な根拠が弱くなることを意味します。
日本株の空売り戦略を立てるよりも、ややハードルが高めになるものと思われます。
米国株の信用取引の関連記事
最後に米国株投資をする上で参考になる関連記事をご紹介します。
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>そんな時さん
コメントをありがとうございます。
そうですね、米国株の信用取引解禁は個人投資家にとってインパクト大だと思います。各証券会社がサービス概要の詳細を明かしていないので何ともいえませんが、コストを抑えて空売りできるようであれば大きな収益のチャンスとなりそうですね。
ただ、初心者にはハードルが高いとも思います。経験を積んでから挑戦するのがベターですね。