大学ファンドという言葉を耳にする機会が多くなりました。
「大学ファンド」は岸田首相の肝いり政策の1つで、有望な大学の研究をサポートする目的で2022年3月から運用開始となりました。
首相官邸HPを見ると、岸田政権の成長戦略のトップにきています。
※出典:首相官邸
相場格言には「国策に売りなし」というものがあります。
国策がテーマの銘柄は強いことを意味する言葉です。
この国策にかんする情報に興味があるけれど、始まったばかりで情報があまり出てこない…そんな人も多いかと思います。
特に大学ファンドの投資先やポートフォリオ、運用方針など
気になる点が多々あると思います。
そこで、今回は大学ファンドの仕組みやポートフォリオなどについて、現時点でわかっている範囲で最新の情報をお伝えしていきます。
目次
大学ファンドとは
(最終更新日:2022/6/22、元記事:2022/3/31)
大学ファンドとは近年日本の大学の国際競争力が低下していることを背景に、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)によって設立されるファンド資金を運用し、利益から大学の研究を支援しようとする取り組みです。
令和3年に文部科学省が公表した資料によれば、ファンドの規模は10兆円。
大学ファンド創設の目的は、世界トップの研究大学の実現に向け、財政と制度の面から強化を図ることなどが掲げられています。
海外の名門大学は個別に資産運用のファンドを持っており、運用資産額も1兆円を超えています。
年間リターンも10%以上になるところもあり、その利益から大学内の研究資金を援助する仕組みが完成しています。
一方、日本の大学は非常に脆弱といわざるをえません。
資産運用額国内首位の慶応大学ですら700億円程度の運用額しかなく、ハーバード大学の60分の1の規模です。
研究資金の多さは、その大学の国際競争力に直結すると言っても過言ではないでしょう。
※参考文献
参考:【2021年】プリンストン大学基金「Princeton University Investment Company」のポートフォリオと運用実績について解説!!
参考:米MIT寄付基金、17年度の運用成績はプラス14.3%-資産約1.6兆円
大学ファンドの仕組み
大学ファンドの仕組み(スキーム)は、やや複雑です。
文部科学省が公表している資料から仕組み図を引用します。
Q.大学ファンドに投資するのは誰?
Q.大学ファンドの運用方針は誰が決めるの?
Q.実際に運用するのは誰?
Q.研究大学にはどのように支援がされるのですか?
Q.大学ファンドの運用資金はどれくらい?
大学ファンドが支援する対象大学
大学ファンドからの支援を受けられる対象の大学は数校程度でかなり限定的となりそうです。
とても狭き門ではありますが、支援を受けられる対象に認定されればメリットが非常に大きいため、各研究大学は大学ファンドからの支援の対象大学に認定されるために動き出しています。
政府は大学ファンドが支援する大学を「世界と伍(ご)する研究大学」をメインに考えています。
国際卓越研究大学に認定されるためには
・ガバナンス体制(合議体の設置など)
・研究力
・事業・財務戦略(財源の多様化、3%の事業成長、独自基金の造成)
といった要件をクリアすることが求められます。
大学ファンドの運用まとめ
大学ファンドの運用に関するあれこれをまとめてご紹介していきましょう。
おそらく大学ファンドについて、特に気になるのが運用方針や投資先などではないでしょうか?
現時点で公表されている情報をまとめてご説明します。
大学ファンドの運用方針
大学ファンドの運用目標・方針は以下のとおり。
オルタナティブ投資とは
・上場株式や債券といった伝統的資産以外の新しい投資対象や投資手法のこと
・コモディティ(商品)、不動産、未公開株や先物、オプション、スワップなど
2021年度中に運用を開始し、最初の5年はファンドの基盤を固める(資産を増やす)ことを重視。
この5年間で実質3000億円の運用益を確保した後、10年以内に長期運用目標を達成するポートフォリオの構築を目指すようです。
※参照:10兆円大学ファンドは株65%・債券35%、利回り最大化狙う-運用案
アセットアロケーション(資産配分)は?
大学ファンドのアセットアロケーション(資産配分)について、22年3月時点でわかっていることをまとめていきます。
すでにご紹介したように、株式65%、債券35%を目安としてオルタナティブ投資を積極的に行い、国際分散投資を積極的に推進していく方針を打ち出しています。
2021年8月12日のブルームバーグ記事「大学ファンドのオルタナ投資推進、専門人材の採用重視-喜田CIO」から引用すると、
10兆円規模の大学ファンドを管理する科学技術振興機構(JST)の喜田昌和運用業務担当理事(CIO)は、オルタナティブ(代替)投資を推進するため、専門人材を多く採用する考えを示した。プライベートエクイティ(PE、未公開株)や不動産、インフラ、ヘッジファンドなど幅広く投資し、運用収益の多様化を目指す。
とあります。
これらの情報をふまえ、アセットアロケーションのイメージをグラフにしてみました。
※関連記事
アセットアロケーション分析 理想の決め方とツール
大学ファンドのポートフォリオ
大学ファンドのポートフォリオについて気になる方も多いことでしょう。
大学ファンドの動向を気にしているのは私たち個人投資家だけでなく、海外ヘッジファンドも同じようです。
22年3月28日付日経新聞電子版記事「日本株「連騰後」に警戒感 年度末の需給要因が消失」では、大学ファンドの買いが入るとの思惑から海外ヘッジファンドの買いが入っている旨の記述がありました。
※参照:「日本株「連騰後」に警戒感 年度末の需給要因が消失」
2022年3月に成立した政府予算案において、今年度の大学ファンドの投資資金枠は5兆円に決められました。
つまり、この5兆円がどの金融資産に投資されていくのか?
2022年3月末時点では、大学ファンドのポートフォリオはわかりませんが、買いそうな銘柄に目星をつけることはできます。
大学ファンドが買いそうな銘柄の特徴
重要なのは
という目標を長期的に安定的に達成し続けられるかどうか。
この目標を実現するためには、
高配当の財務優良大型株
が有料候補になるものと考えられます。
大学ファンドが買いそうな日本株の特徴をまとめました。
買いそうな銘柄の例
大学ファンドが買いそうな銘柄の特徴を踏まえ、無料スクリーニングツール、バフェットコードでスクリーニングをしてみました。
<スクリーニング条件>
・東証一部(22年3月時点でプライム市場がないため)
・時価総額500億円以上
・自己資本比率40%以上
・配当利回り4.0%以上
・配当性向30%以上
※出典:バフェットコード
<スクリーニング結果>
ただ、あくまでクロサキが推測する情報ですので、実際とは異なる可能性があります。
その点はご留意くださいませ。