
新日鉄の株価は上がるのか?
11/2には18年4~9月の決算発表がおこなわれました。
注目すべきポイントはたくさんありますが、筆者はこれから株価が大きく上昇する可能性は低いと考えます。
11/1までの株価の推移をみてみましょう。
新日鉄(5401)
1日の終値は2,055円50銭と、安値から脱していません。
これから株価はどう動くのか?
新日鉄の株価に強く影響するトピックを、以下検証していきましょう。
新日鉄の株価を予想するのに重要なトピック
新日鉄の株価を予想するのに重要なトピックとして「米中貿易摩擦」、「エッサール・スチールの買収」、「中国の粗鋼生産と自動車需要」の3点について検証します。
米中貿易摩擦の影響
米中貿易摩擦のあおりを受け、トランプ政権は3月にアルミ製品に対する追加関税を発動しましたが、影響は限定的とおもわれます。
新日鉄の米国への鋼材輸出は国内総生産量の2%程度と少ないので、影響はそれほどありません。
新日鉄は自動車用の線材やシームレスパイプなどの高付加価値製品を輸出しており、米国内で代替調達が不可能なことも、楽観的な見方につながっています。
米中貿易摩擦は新日鉄にとってむしろ追い風になるとの見方もあります。
米国では輸入制限の影響で鉄鋼の供給不足や価格上昇を懸念する声が高まっていますが、新日鉄は米国内に子会社や持ち分法適用会社を持っているため、それらの需要にこたえることが可能です。
新日鉄の米国における生産能力はおよそ710万トンといわれており、米国が本格的な供給不足に陥った際には、頼れる存在となるはずです。
エッサール・スチールの買収
新日鉄は世界最大手のアルセロール・ミタルとともに、インドの鉄鋼会社エッサール・スチール買収する予定です。
インドの粗鋼生産量は、2017年で約1億トン
18年度中には日本を上回り、中国に次ぐ世界2位の粗鋼生産国となる見通しです。
成長市場の拠点をおさえることになるため、中長期的にはプラスに働くと見込まれています。
新興国の企業を買収する際に求められるのが、上流から下流までの全生産ラインを新興国内で完結させる「自国生産化」への協力であり、新日鉄は現地の製鉄所や鉄鋼会社に事業資金を投じることで、その後押しをします。
米中貿易摩擦が過熱化し保護貿易の気運が広まることも予想されますが、そうなると国内の製鉄所と海外加工拠点をつなげる「分業輸出」が難しくなります。
インドに一貫した生産拠点をかまえることは、貿易摩擦のリスクに備えるうえでプラスにはたらくと考えられます。
中国の粗鋼生産と自動車需要
まずは中国の粗鋼生産からみていきましょう。
今年6月、中国の鋼材輸出が2年ぶりに増加に転じたことで、日本の鉄鋼業界は警戒感を強めています。
中国は国際社会の批判を受け粗悪な違法鋼材を排除してきましたが、それらは統計の対象から外れているため、中国の正確な鉄鋼需要は不明です。
そのため輸出増の原因を読むことができず、鉄鋼業界は対応の検討にとまどっています。
16年に前年比13.7%増だった中国新車販売台数の伸び率は、17年に3.0%増まで減少し自動車需要の停滞がうかがえます。
中国は17年に小型車減税策も打ち切っており、先取りした需要の反発でこれからさらに新車市場が減速することも十分考えられます。
中国国内にある乗用車メーカーの生産計画をすべてあわせると、2020年の生産能力は4,600万台に達する予定で、需要に対し3割増の供給超過になると推測されています。
まとめ
米中貿易摩擦が新日鉄にとってむしろ有利にはたらく可能性や、インドにおける買収により貿易摩擦のリスクを軽減できるといった好材料もありますが、それ以上に中国のリスクが大きいと筆者は考えます。
中国はおもに建設投資によって経済成長を実現してきましたが、過剰供給により各地に「ゴーストタウン」ができているという話をよく耳にします。
その中国の鋼材輸出が2年ぶりに増加に転じたのは、中国における鋼材需要の停滞を示唆していると考えられます。
粗悪な違法鋼材を統計から外すことで、実際の需要がわからないことも踏まえれば、今後の鉄鋼業界の見通しに決して楽観はできません。
自動車も2020年を迎えるころには供給超過が予想されているため、鉄鋼需要がこれから拡大するとは考えにくいでしょう。
インドにおける粗鋼生産の拡大が期待されますが、中国の需要減に相殺されてしまう可能性が高いとおもわれます。
これから新日鉄の株価が大きく上昇するとは考えづらいので、株の購入は慎重にした方がいいでしょう。

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