ナイキ株が急落した背景にあるアメリカの人種問題

    ナイキ株急落

    9月4日にナイキ株が急落!

    9月4日、アメリカNY市場でナイキ株が大きく下落しました。82ドル台で推移していた株価が突然ギャップを付けて79ドル台まで下落しました。

    ナイキの株価チャート

    Chart courtesy of StockCharts.com

    背景にあるのは人種問題

    その原因は、ナイキの広告戦略にありました。9月3日、NFLのコリン・キャパニック選手(1987- )が、ナイキのJust Do Itの新たな広告塔になることをツイッター上で公表したのですが、その後すぐに、ナイキに対するボイコットを呼びかける投稿がツイッター上で氾濫したのです。中には、ナイキのスニーカーを燃やす画像まで投稿されている始末です。こうした騒動に関連してナイキ株も下落したのは間違いありません。

    その背景にあるのは、アメリカの人種問題です。コリン・キャパニック選手は、サンフランシスコ49ersのクオーターバックでしたが、2016年、警官が黒人を射殺する事件が相次いだことに抗議し、人種差別が横行する国への敬意を拒否して、試合前の国歌斉唱中に起立せず、片膝をついたポーズをとるという行動に出たのです。

    コリン・キャパニック選手

    Colin Kaepernick (1987- )

    これは、保守層から見れば、国歌に対する侮辱行為、アメリカという国家に対する侮辱行為とも受け取られかねません。例えば、彼の抗議行動を見たトランプ大統領は「son of a bitch」と呼んで非難しています。また、NFLも新しいルールを作って、国歌斉唱中にひざまずいた選手から罰金を取ることを発表しました。

    今回、コリン・キャパニック選手がナイキの広告塔になることを受けて、ナイキ・ボイコット運動をネット上で起こしている人々も、いわゆる「トランプ大統領を支持している白人の保守層」と見られています。

    トランプ大統領

    また、アメリカの投資家の多くも白人層が占めており、ナイキボイコット騒動を受けてナイキ株を売ったというよりは、彼ら投資家たちもまた、ナイキの「反トランプ」とも解釈できる広告戦略に対して抗議の意味を込めてナイキ株を売ったのかもしれません。

    投資家なら政治情勢もチェックせよ

    むかしから「政治と経済は切っても切り離せない」とよく言われますが、今回のナイキ株下落は、まさに政治的な要因によるものです。私たち日本人には理解できないほど、アメリカの人種問題は、いまだに大きな政治的テーマであり、人種差別をめぐってアメリカ社会は大きく分断されている。今回のナイキ株の下落を見ると、そんなことが想像できます。

    ちなみに、キャパニック選手は、2016年シーズン終了後、サンフランシスコ49ersとの契約が早期終了となり、その後はフリーエージェントのままとなっています。

    ここからは私自身の私見になりますが、今回のナイキの広告戦略は、長期的には上手くいくのではないでしょうか。ナイキの主なターゲット層が10代、20代の若者層であることを考えても、「怒れる中高年の保守層」からヘイトを受けたところで、長期的にはそれほどのダメージはないように思います。

    ナイキが以前、東南アジア工場における児童労働・強制労働の実態を暴露されて社会的イメージを大きく損ねたことを踏まえれば、なおさら今回の広告戦略は妥当なものと言えるでしょう。

    CSV(共有価値の創造)やESG(環境・社会・ガバナンス)といった企業の社会性・公共性が強く問われるようになっている現在、ナイキが人種差別に対してNOの態度を示していき、多様性を尊重する企業イメージを構築することは、中長期的には株価上昇の要因にもなっていくはずです。今回の株価下落はあくまで一時的な反発と捉えるのが大方の見方ではないでしょうか。

    いずれにせよ、投資の世界に参加するなら、経済や金融のみならず、政治や社会に対する知識や情報も、常に身につけておくべきでしょう。

    キャパニック選手のツイート

    ちなみに、コリン・キャパニック選手による件のツイートは下記のとおりです。

    (何かを信じろ。たとえそのためにすべてを失うのだとしても)